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2000年 9月26日
遺伝子解析のためのオリゴプローブ設計ソフトウェアを開発
~ポストゲノム時代に必須な革新的技術を開発~
オリンパス光学工業株式会社(代表取締役社長:岸本正壽)は、来たる遺伝子医療時代に向けて、がんや遺伝病などに関連する遺伝子解析を行うための高速な塩基配列計算が可能なオリゴプローブ※1設計ソフトウェアを東京大学大学院総合文化研究科の陶山明助教授と共同開発しました。本ソフトウェアは、特異性の高い塩基配列の計算が従来法※2で数週間から数ヶ月といった膨大な時間を要していたのに対し、独自のアルゴリズムを用いることにより大幅な高速化を実現し、より高精度な配列を数日で計算可能にしました。これにより、膨大な塩基配列から標的の遺伝子を高速に検出して解析するという世界的な研究課題を一気に解決する可能性があります。
現在、ヒトゲノムプロジェクトによりヒト遺伝子の約30億個もの全塩基配列が解明され、その塩基配列を医療に役立てていくポストゲノム時代に入ろうとしてます。今後、10万種以上あると言われるヒト遺伝子のうち糖尿病などの生活習慣病やがんに関連する遺伝子が明らかにされ、予防のためのリスク診断や、効果的な投薬のための薬剤応答性診断※3などの高度な遺伝子診断へ応用されることが期待されています。
遺伝子を解析するには、組織や末梢血などから抽出したDNA※1の塩基配列を読みとります。その手法としてはDNAマイクロアレイ※4を用いたハイブリダイゼーション法※1があり、20~30塩基程度の長さのオリゴヌクレオチドプローブ(オリゴプローブ)と呼ばれる一本鎖のDNAが用いられます。このオリゴプローブは標的遺伝子に相補的な塩基配列に設計しますが、標的以外の似かよった配列の遺伝子に結合しないような配列を選択することは難しく研究者の勘や経験に頼って行っていました。このため、オリゴプローブが標的でない遺伝子と結合することがあり、結局実験で良い配列を選別するしかありませんでした。
今回開発しましたオリゴプローブ設計ソフトウェアは東京大学大学院総合文化研究科の陶山助教授のもとで考案されたタプル法※5を用い、対象の遺伝子全体を何度も走査することなく標的特異性の高いオリゴプローブ配列を設計することができます。さらにソフトウェアにそなえた計算フィルタ※6により、適当な反応温度でグループ化された、自己分子内で構造をつくらない※7理想的な塩基配列を得ることができます。これら温度特性のそろったオリゴプローブは、弊社で開発中のDNAキャピラリアレイ※8を用いれば温度条件ごとに分けて実験することができ、より正確な遺伝子診断が実現できます。
尚、「オリゴプローブ設計ソフトウェア」の技術は、9月28日に新宿・京王プラザホテルで開催されます「バイオジャパン2000」のシンポジウムで関連技術と共に発表します。
1. DNAの性質とハイブリダイゼーション法、オリゴプローブ
(1) DNA(デオキシリボ核酸)は生物の遺伝情報を担う分子で、分子は糖鎖部分と塩基部分からなります。DNAはその塩基によって4種類に分けられます。このうちアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が相補的に結合します。相補的な一本鎖同士は結合すると二本鎖を形成します。
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(2) (1)の性質を用いて、標的遺伝子に相補的な配列を持つDNAを準備して結合すれば、標的遺伝子を検出することができます。この方法をハイブリダイゼーション法と呼びます。オリゴプローブとは数塩基から数十塩基の長さ(オリゴ)をもった検出のための探り針(プローブ)の役目をするDNAのことを呼びます。
(3) この二本鎖の結合はDNAの存在する水溶液の温度が上昇すると融解し、一本鎖に分かれます。この融解温度は塩基配列に依存します。正確な結合をみるにはオリゴプローブの融解温度にあった条件下で実験する必要があります。
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2. 従来の標的特異性のチェック方法
候補の塩基配列を総当たりで照合し、標的部位以外で結合しないかチェックしていました。
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1塩基ずつ位置をずらしながら、標的以外の遺伝子と結合することがないか照合します。左の例の場合は結合する可能性が非常に高く候補としては不適です。
この照合を全ての候補について行うには膨大な時間を要します。ヒトやマウスなどの長い塩基配列の遺伝子を持つ生物についてこの計算を行うには、大型計算機や専用に設計された計算機が必要です。
3. 薬剤応答性診断
例えば薬ではありませんがアルコールに強い人、弱い人がいるように、薬の効きは個人によって異なります。抗がん剤など副作用の強い薬は効く効かないをあらかじめ知ることで患者さんの無駄な苦痛を避けることができます。
4. DNAマイクロアレイ
DNAマイクロアレイとはハイブリダイゼーション法で数多くの遺伝子を検出するセンサデバイスです。スライドガラスなどの基盤上に直径数百ミクロン程度のスポットでオリゴプローブなどを場所を決めて固定して作製します。ここに蛍光分子などで標識した標的核酸を含む試料液をかけたとき標的が結合すれば発光位置からどの遺伝子が試料中に存在するかがわかります。
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5. タプル法
(1) タプルと呼ぶ数塩基程度の短い塩基配列(この例は7塩基)が、全遺伝子の中で何回出現するかを数え上げます。この数え上げははじめに1度だけ行います。
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(2) 候補の塩基配列に含まれるタプルを調べ上げて、高頻度に出現しているタプルが無いかを調べ、候補が全遺伝子のうちで「ありふれた」配列でないか特異性を評価計算します。
6. 本ソフトウェアの構成と計算フィルタ
最初にタプル頻度を計算してから、候補配列をタプルで評価して特異性の高いものを選択します。途中、実験条件によって定まる制限を適用したあと、実験に適した熱特性をもつ候補だけを通すフィルタにかけて候補を絞ります。
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7. 自己分子内構造
DNAは相補的に結合する性質がありますが、一本鎖DNAだけでも十分に長ければ図のように自己分子内で結合してしまいハイブリダイゼーション反応を起こしにくくなることがあります。このような構造をとりうるかどうかは計算で予測することができます。
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8. 本ソフトウェアで設計したオリゴプローブのDNAキャピラリアレイでの利用
(1) DNAキャピラリアレイは、標的遺伝子に相補的なオリゴプローブを場所決めして固定したキャピラリ(細管)を集積した遺伝子検出デバイスです。
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(2) 管路ごとに反応条件を変えられるので、本ソフトウェアで設計したオリゴプローブを温度条件ごとにキャピラリを変えて配置することで、それぞれに適した条件下で同時に結合反応できます。
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オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
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