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2002年 8月20日
1分子蛍光分析法によりタンパク質相互作用を
溶液中で数秒の高速解析
分子間相互作用解析システム「MF20」発売
分子間相互作用解析システム「MF20」
分子間相互作用解析システム「MF20」
オリンパス光学工業株式会社(社長:菊川 剛)は、ゲノム創薬や生命現象の解明に向けてタンパク質機能解析で重要な手がかりとなる分子間相互作用の解析システム「MF20」を、EVOTEC Technologies GmbH(エボテック社、ドイツ・ハンブルグ)と共同開発し、2002年8月末から国内での受注を開始するとともに、順次海外に向けても販売します。本装置は1分子蛍光分析技術*1を用い、従来法に比べて高速なだけでなく安価で高精度な解析が可能です。レセプター*2に対する最適リガンド*3の検索など主に創薬企業をはじめ大学、研究機関をターゲットに販売を開始します。
発売の概要
製品名 発売時期
分子間相互作用解析システム「MF20」 2002年8月末
主な特長の概要
  1. タンパク質・DNA等の相互作用の高感度・低ノイズ解析を実現
  2. ハイスループット解析を実現
  3. 低ランニングコストを実現
  4. 多彩な解析手法を採用
  5. 解析前の精製操作・サンプル洗浄が不要
  6. 固相化不要でチップから解放
市場導入の背景
ヒトゲノムの概略が明らかになったことで、ゲノム研究はタンパク質機能解析へと進展しています。リガンドなどタンパク質と相互作用する物質を探索する研究が活発化しており、市場からは生体機能分子をできるだけ生体内に近い環境下で機能解析したいという強い要望があります。

本装置は、1分子蛍光分析技術の採用により、サンプルを固相化する必要がなく、バッファー溶液中で生体機能分子間の結合を数秒から数十秒の高速解析が可能です。共焦点レーザー光学系*4と高感度光検出器を採用し、約1フェムトリットルという超微小領域中で1分子レベルの挙動を捉えることにより、ノイズ低減と蛍光シグナルの高感度計測を実現しました。また、溶液中の測定により測定サンプルにもほとんどダメージを与えない為、そのまま他の実験に用いることも可能です。

解析方法としては、FCS解析法*5、FIMDA解析法*6、FxCS解析法*7の3手法を標準で装備しています。ハイスループットな解析から難易度の高い相互作用解析まで、様々なアプリケーションに対応する装置として、これからのゲノム創薬や生命現象の解明に貢献してまいります。
主な特長の詳細
  1. タンパク質・DNA等の相互作用の高感度・低ノイズ解析を実現
    共焦点レーザー光学系と高感度光検出器(Avalanche Photodiode)を採用し、約1フェムトリットル(1000兆分の1リットル)という超微小領域中で1分子レベルの挙動を捉えることにより、ノイズ低減と蛍光シグナルの高感度計測(0.5ナノモル/リットル以上)を実現しました。

  2. ハイスループット解析を実現
    1サンプルの解析に要する時間は数秒から数十秒と、ハイスループットな解析から難易度の高い相互作用解析まで対応します。

  3. 低ランニングコストを実現
    装置本体だけではなく、ランニングに要する試薬・消耗品(ガラスボトムマイクロプレート・純水)の使用を最小限に抑えて低ランニングコストを実現します。

  4. 多彩な解析手法を採用
    FCS解析法、FIMDA解析法、FxCS解析法の3手法を標準で装備し、分子の大きさ、分子濃度、分子の存在比率、1分子あたりの明るさ等が解析可能です。また、従来では判別が難しかった分子量の近い分子同士の相互作用解析や2波長同時計測も可能なため、様々なアプリケーションに対応できます。

  5. 解析前の精製操作・サンプル洗浄が不要
    結合分子と非結合分子が混在している溶液中でも、それぞれの蛍光シグナルを同時に計測して識別できます。また、従来の解析手法では不可欠であった面倒なサンプルの精製は全く不要です。

  6. 固相化不要でチップから解放
    反応させたサンプルをガラスボトムマイクロプレートに分注して装置にセットするだけで、解析は自動的に完了します。従来の解析手法(ELISA*8や表面プラズモン共鳴*9)で必要だったセンサーチップやマイクロプレート底面へのサンプルの固相化といった面倒な前処理操作も全く不要です。
*1 1分子蛍光分析技術
共焦点レーザー光学系により約1フェムトリットル(1000兆分の1リットル)という超微小領域中で生体構成分子の挙動を捉え、蛍光ラベルされたプライマー(PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)の開始に関係する鋳型(いがた)DNAに相補的塩基配列をもつDNA鎖)の増幅産物やタンパク質の大きさ、計測領域あたりの分子数を1分子レベルで計測する、生体内に近い環境下(溶液中)での分子間相互作用解析技術。また当技術は、Evotec Technologies GmbH(CEO:Dr. Carsten Claussen/ドイツ・ハンブルグ)と共同開発したものです。
*2 レセプター
細胞に存在し、物理・化学的な刺激を認識して細胞に応答を誘起するタンパク質のこと。
*3 リガンド
薬剤を含む情報伝達物質のこと。
*4 共焦点レーザー光学系
結像する位置(合焦位置)にピンホールを置くことで、合焦位置以外からの光を一切排除できるので、従来の蛍光リーダーに比べて高いS/N(シグナル/ノイズ)比を得られる光学系です。
*5 FCS解析法
Fluorescence Correlation Spectroscopyの略:蛍光相関解析法のこと。蛍光シグナルの解析により、複数の分子種について多項目のパラメータ(分子の大きさを示す並進拡散時間*10、分子濃度)計測できる演算方法。
*6 FIMDA解析法
Fluorescence Intensity Multiple Distribution Analysisの略:多項目蛍光強度分布解析法のこと。並進拡散時間、分子濃度に加え、1分子あたりの蛍光強度も解析できる演算方法。
*7 FxCS解析法
Fluorescence Cross-Correlation Spectroscopyの略:相互相関解析法のこと。異なる色で蛍光標識された分子の蛍光シグナルの解析により、それぞれの色の分子が個別に動いているか一緒に動いているかを解析し、分子間相互作用をより感度よく計測できる演算方法。従来では判別が難しかった分子量の近い分子同士の相互作用解析が行なえます。
*8 ELISA
Enzyme-linked immuno-sorbent assayの略:固相酵素免疫検定法のこと。抗原または抗体を酵素で標識し、抗体または抗原の存在を、酵素活性を利用して検出する方法。
*9 表面プラズモン共鳴
Surface Plasmon Resonance(SPR)のこと。被測定サンプルを固相化したセンサーチップ表面で生じる微量な質量変化をSPRシグナルとして光学的に検出することで、2分子間の結合と解離の状態を解析する方法。
*10 並進拡散時間
分子の大きさにしたがって、増大する分子の物理的係数。
EVOTEC Technologies GmbHの概要
住所: Schnackenburgallee 114,22525 Hamburg, Germany
President&CEO: Dr. Carsten Claussen
設立: 2002年
事業内容: EVOTEC Technologies社は複雑な生命科学アプリケーションを革新的技術で解決します。ハードウェア、ソフトウェア、およびバイオ製品モジュールのシームレス統合し、小型化とオートメーションの最先端テクノロジーを融合します。従業員数(ドイツのハンブルク、デュッセルドルフ、ベルリン)は約60名。
主な仕様
解析手法 1分子蛍光分析(FCS解析法、FIMDA解析法、FxCS解析法)
測定項目 濃度、並進拡散時間、分子蛍光強度、相互相関
レーザー波長 488nm、543nm、633nm(2波長同時計測可能)
装置外観 本体は卓上型 W710 x H445 x D600 mm
(アルゴンレーザーは外付け)
重量 約120kg
自動調整 焦点位置、共焦点光学系、対物補正環など
電源 入力電圧:単相AC100V~AC240V
消費電力:600VA
(アルゴンレーザーは別電源:2000VA)
ソフトウェア Windows2000上で、専用ソフトウェアにて稼動
付属品 PC、モニター
消耗品 ガラスボトムマイクロプレート(96、384 well/plate)、純水
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
  • 本リリースに掲載されている内容は、報道関係者向けに発表した情報です。
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