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2004年 4月14日
オリンパス、世界初の動画観察が可能な「高速原子間力顕微鏡」*1を開発
~生きたタンパク質の1分子単位での動画観察が可能~
オリンパス株式会社(社長:菊川  剛)は、生命科学の先端研究向けに、生きたタンパク質を1分子の単位で動画観察(注)することができる「高速原子間力顕微鏡」を開発しました。この「高速原子間力顕微鏡」は、金沢大学理学部物理学科の安藤敏夫教授の研究成果をもとに、金沢大学と当社との文部科学省科学技術振興調整費によるマッチングファンド方式の共同研究、及び、知的基盤整備事業の一環として、経済産業省からの委託により開発されました。従来は止まった状態でしか観察できなかったモータータンパク質*2やDNA,細胞膜などを動画で観察することにより機能解明に役立ち、創薬、臓器の再生、病気の治療の研究などへの幅広い貢献が期待されます。
(注): 240nm(1nm:ナノメートルは百万分の1mm)四方を観察した場合1秒間に12.5フレームの撮影が可能です。なおこの速度は、金沢大学安藤敏夫教授が実験機で達成した速度と同等です。
*1  原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope):
生物分野だけでなく工業分野などでも幅広く利用されている顕微鏡です。レンズを覗いて観察する光学顕微鏡と比べ数100倍以上の分解能(小さなものを見分ける力)を持ちます。観察の方法は、カンチレバー(片持ち梁:参考資料をご参照ください。)の先についたプローブ(探針)で非常に小さな力でサンプルをなぞり、表面の凹凸にあわせてたわむカンチレバーにレーザ光を当て、たわみの状態を検出することによって表面形状をとらえる顕微鏡です。液体中のサンプルを分子レベルの大きさの分解能で観察することができます。サンプルの原子とプローブ先端の原子が近づくと、原子同士が接触するかしないかの微妙な状態で原子間力といわれる力が働きます。この原子間力を利用してサンプルを観察しているため原子間力顕微鏡とよばれます。
*2  モータータンパク質:
細胞の中で筋肉の収縮や物質の輸送を行うタンパク質。
「高速原子間力顕微鏡」の主な特長の概要
実用製品として世界最高速、1秒間に12.5フレームの動画観察が可能
(1)微小でしなやかなカンチレバー
(2)ナノレベルの細かさで移動が可能な高速スキャナー
「高速原子間力顕微鏡」の試作機
「高速原子間力顕微鏡」の試作機
「高速原子間力顕微鏡」の試作機の主要ユニット部分
「高速原子間力顕微鏡」の試作機の主要ユニット部分
開発の背景
生命科学の研究分野ではより生体に近い状態での細胞やタンパク質などの観察ニーズが高まっています。光学顕微鏡は生体内の細胞や組織といった集合体を観察するために使われていますが、原子間力顕微鏡はその集合体を1分子単位でより微細に観察することができます。従来の原子間力顕微鏡では1枚の画像を得るために1分から4分程度かかり、動いているタンパク質の様子を観察することは不可能でしたが、それを可能にする「高速原子間力顕微鏡」の初期のシステムを金沢大学の安藤敏夫教授が開発し、当社は、そのシステム向けの微小化されたカンチレバーを開発しました。その開発で世界最高速である1秒間に12.5フレーム(従来品の約1000倍)で撮影が可能な「高速原子間力顕微鏡」を実現しました。その後も文部科学省の科学技術振興調整費の支援のもとに金沢大学と当社が協力し基本性能の向上に取り組んできました。また、当社で製品化へ向けシステムを最適化し、実用品としても世界最速の装置にすることができました。この実用品開発の一部には、経済産業省からの知的基盤整備にかかる委託費が使われています。今後は、この「高速原子間力顕微鏡」の潜在的な用途を探索します。
「高速原子間力顕微鏡」主な特長の詳細
実用製品として世界最高速、1秒間に12.5フレームの動画観察、液体中の生体分子の観察が可能
(1) 微小でしなやかなカンチレバー
  原子間力顕微鏡で動画観察をするためにはサンプルをなぞるためのプローブ(探針)が、上下に高速に動くことが必要ですが、そのためにはプローブを保持するカンチレバーを従来より小さくする必要がありました。今回受注販売を開始する「高速原子間力顕微鏡」には、当社のMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 技術を生かし開発した、従来と比べて1/20に微小化された柔らかいカンチレバーを採用しました。また、プローブの先が18nm(先端半径)以下なので、生体分子などの小さなものを測定するのに適しています。
(2) ナノレベルの細かさで移動が可能な高速スキャナー
  サンプルを動かすスキャナーはカンチレバー同様、高速、微細、3次元(縦・横・上下)に動く必要があります。そこでスキャナーを小型化することで、サンプルに適したナノレベルの細かさでの高速走査を可能にしました。また、スキャナー自身の動きで生じる振動がない堅牢設計にしています。その結果、動画観察が可能になりました。
◆ 「高速原子間力顕微鏡」で観察した生体分子の動画は以下のウェブページでご覧になれます。
・モータータンパク質
http://www.s.kanazawa-u.ac.jp/phys/biophys/index.htm
金沢大学理学部物理学科の安藤敏夫教授のウェブページ
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