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2005年12月5日
薬剤の効きやすさ・副作用の研究などに向け
オリンパス、細胞にダメージが少ない発光イメージング技術を開発
~個々の細胞の発光イメージングが可能に~
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛)は、生命科学の先端研究分野向けに、生きた個々の細胞から発せられる微弱な光を画像化する高感度な「発光イメージング技術」を開発しました。従来は、細胞群全体の遺伝子の発光量(発現情報)を、平均の数値でしか得ることができませんでしたが、本技術により、個々の細胞の発光量だけでなく、形態、位置などのさまざまな情報を画像、数値の両方で得ることが可能になります。また、数日から数週間までの長期的な遺伝子発現の変化をモニタリングすることが可能で、人への薬剤の効きやすさや副作用の研究、そして再生医療の研究などへの幅広い貢献が期待されます。
尚、本「発光イメージング技術」は12月7日(水)~12月10日(土)まで福岡Yahoo Japanドーム他5施設で開かれる「第28回日本分子生物学会年会」(学会長:花岡 文雄)にて技術紹介いたします。
【「発光イメージング技術」について】
発光での観察を行う際、まず始めに発光遺伝子*1を導入した細胞に発光基質*1を与え細胞そのものが自ら光るようにします。しかし細胞からの発光は極めて弱いため、これまでは顕微鏡に非常に高感度なCCDカメラを取り付けなければ細胞からの発光を撮影することが出来ませんでした。また、画質は満足のいくものではなく、カメラも高価でした。本「発光イメージング技術」は、明るさを追求し、発光観察に最適化された光学系を新たに設計することにより、従来の約1/30程度の露出時間で画像を取得することが可能になりました。細胞からの発光は非常に微弱ですが、蛍光観察のように細胞を光らせるための励起光を必要としないので、細胞にダメージを与えることなく、非常に定量性にすぐれた画像やデータを取得することが可能です。本技術により、例えば、生細胞の以下の発現量を測定することができます。
※1  発光遺伝子・発光基質:発光遺伝子によって作られるルシフェラーゼという酵素が発光基質であるルシフェリンを酸化します。そのときに発生する化学エネルギーが光に変換されて発光します。これはホタルが光る仕組と同じものです。
1) 個々の細胞の形態・位置情報と合わせた、注目する遺伝子の発現量
2) 個々の細胞の細胞周期などの生理状態と遺伝子の発現量
3) 細胞や組織間での多種類の遺伝子発現量
これらを測定することによって、例えば、ある薬剤を細胞群に投与した時、どのような反応がどの細胞のどの部分で起きているかを時系列で画像化することができ、人への薬剤の効きやすさや、副作用についての研究に役立ちます。また、再生医療や発生分化の研究などへの応用も考えられます。
【開発の背景】
すでに、ヒトゲノムプロジェクトによって全ての遺伝子が解明されました。そして現在の生命科学の先端研究分野では、それらの遺伝子がいつどのようなタイミングで発現し、また調節されることによって、目や耳などの様々な器官が作り出されたり、朝起きて夜眠るような生体のリズムがどのようにして生まれるのかを研究する段階に来ています。このような遺伝子の発現調節の研究は、ポストゲノム時代の重要な領域として位置づけられています。遺伝子の発現調節を画像化することにより、例えば、ある状態の細胞にどのような因子や薬剤が作用すると、どのような遺伝子が発現してくるのか、または抑制されるのかを知ることができます。これは、目などの器官形成や再生、また生体リズムのメカニズムを知る上で重要な手がかりとなります。従来、発光による解析はルミノメーターと呼ばれる装置で行われていました。これは遺伝子の発現調節のデータを得るためにはある程度有効な手段でしたが、発光量が微弱なため細胞個々のデータを得ることや、それを画像化することは難しく、細胞群全体のデータを数値でしか得ることができませんでした。今回開発した「発光イメージング技術」は微弱な発光を検出できる明るい光学系や、細胞を最大数週間まで生きたまま観察することが可能なインキュベータなどの機能を持たせ、細胞の個々のデータだけでなく、それぞれを長時間にわたって画像化・データ化する事が可能です。今後は、更に細胞・組織レベルで遺伝子の発現調節のネットワークや相互関係を解明するため、画像による多種類の遺伝子調節の解析が求められてくると考えられます。そのような研究分野に向け、本技術のいち早い製品化を目指していきます。
【「発光イメージング技術」による細胞の発光観察例】
【「発光イメージング技術」による細胞の発光観察例】
テトラサイクリンという薬剤によって発光する遺伝子の働きが誘導され、細胞が発光してくる様子を、時間を追って観察した。
(HeLa細胞、露出時間:1分)
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