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2007年11月30日

オリンパス株式会社
株式会社ジーンケア研究所

オリンパスとジーンケア研究所、簡便で高精度なsiRNA*の生体内濃度測定法を共同開発

~siRNAの薬物動態研究の促進により、医薬品実用化に貢献~

オリンパス株式会社(社長:菊川 剛、以下、オリンパス)と株式会社ジーンケア研究所(社長:六川 玖治、以下、ジーンケア)は、オリンパスの1分子蛍光分析システム「MF20」を用いた「蛍光偏光解析法*」により、siRNAの生体内濃度を簡便かつ高精度に測定する手法を共同で開発しました。siRNAを薬物として人体に使用するためには、有効性の証明だけでなく生体内での挙動を明らかにすることが不可欠ですが、微量なsiRNAの、組織への集積、血中濃度の推移、経時的な代謝といった薬物動態を測定する有効な手法がこれまでになく、siRNA医薬品を開発する際の大きなハードルの一つとなっていました。本手法により、siRNAの薬物動態の正確な分析が簡便にできるようになり、siRNA医薬品の実用化に向けた研究が促進されることが期待されます。なお、本共同開発の成果については、2007年12月3~4日に石川県立音楽堂(金沢市)で開催される「第17回アンチセンスセミナー」で両社が共同で発表する予定です。

*siRNA: 標的となる遺伝子コピー(mRNA)の一部と同じ塩基配列を持つ“短い2本鎖RNA”(short interfering RNA)。siRNAは特定のmRNAを効率よく分解するので、次世代医薬品としての期待が高く、世界の大手製薬会社やバイオベンチャーによる技術や特許の囲い込み並びに激しい開発競争が行われている。
*蛍光偏光解析法: 液体中の蛍光分子の分子量の増減による偏光度の変化を、鋭敏に捉え解析する当社独自の手法。

RNA干渉(RNA interference:RNAi)は昨年のノーベル医学・生理学賞の対象となった生物現象であり、生物の身体に備わった一種の防御反応であることから、この原理を用いた新しい医薬品の開発が世界の製薬企業やバイオベンチャーで進められています。標的とする遺伝子の発現を抑制し、タンパク質の生成を阻害するRNA干渉の仕組みを応用した核酸医薬は、抗体医薬に次ぐ次世代医薬品として期待されています。特に、siRNA(short interfering RNA)は、特定の遺伝子の発現を、微量かつ高い選択性により抑制するため、副作用の少ない医薬品となることが予想されています。しかしながら、siRNAの医薬品としての優れた特性については多くの研究から予想できるものの、医薬品化するためのプロセスとして必要な薬物動態の解明などには、従来技術は使えないという問題があり、投与したsiRNAの生体内での分布や濃度を簡便かつ正確に測定する有効な手法がないことが実用化への壁となっていました。こうした課題を解決すべく、オリンパスは同社の1分子蛍光分析システム「MF20」を用いた「蛍光偏光解析法」により、ジーンケアと共同で生体内siRNA濃度を測定する実験手法の開発を2007年初頭から行ってきました。

「MF20」は、オリンパス独自の1分子蛍光分析技術を用いた分子間相互作用解析装置で、2002年の発売以来、生体内に近い環境下でタンパク質やDNAの相互作用が解析できるという高い評価を最先端のバイオ・ライフサイエンス研究分野で得てきました。また近年盛んなRNA研究では、siRNAやmiRNAが注目されるようになってきましたが、siRNAは分子量が小さく生体内での濃度も低いため、従来法では検出が難しく、同社の1分子蛍光分析技術の有効性がsiRNA検出に向けても認知されつつあります。一方、ジーンケアは、RNA干渉の基本特許を保有する米国アルナイラム社から、臨床応用を目的とした包括的な独占的使用権を日本で唯一供与されており、siRNA医薬分野で日本をリードする創薬ベンチャーです。ジーンケアは早くからsiRNAの抗がん剤としての有用性に着目し、実用化に向けた開発を進めている途上、生体内に分布した微量のsiRNA濃度を簡便かつ正確に測定する技術を必要とするに至りました。このほど、次世代医療を目指したバイオ・ライフサイエンス研究に注力する両社の共同研究開発の結果、1分子蛍光分析システム「MF20」を用いた生体内siRNA定量化の成功に至りました。

共同開発した実験手法の手順と結果

  1. siRNAを導入した培養細胞や血液から、核酸を抽出する。
  2. 抽出したsiRNAを含む核酸をサンプルとして、導入したsiRNAと相補的な配列を持つ蛍光標識1本鎖DNAプローブ*を用いてアニーリング*させ、DNA-RNAハイブリッドを形成する。
  3. 反応後の混合サンプルを「MF20」を用いた蛍光偏光解析法で解析する。
  4. DNA-RNAハイブリッドを作ったsiRNAは分子量が増加する。この分子量の増加によって蛍光偏光度が変化した割合により、siRNAの濃度が明らかになる。
*蛍光標識1本鎖DNAプローブ: 蛍光標識された1本の鎖からなるDNA分子で、DNA塩基配列の相補性を利用して反応させ、特定の配列の核酸を検出するために使われる。
*アニーリング: 温度を緩やかに下げることによって、核酸の再結合を促すこと。

[ 実験手順 ]

実験手順

今後の展望

本実験手法では、サンプルの固定や解析前の精製や洗浄が不要な1分子蛍光分析システム「MF20」を使用し、低分子のsiRNAを高速に計測できる蛍光偏光解析法で解析するため、スピーディかつ低コストでsiRNAの生体内濃度測定が可能です。本実験手法の普及により、siRNAの薬物動態の研究が促進されれば核酸医薬の早期の実用化が期待されます。今後、オリンパスとジーンケアは、協力して国内外の製薬企業やバイオベンチャーなどに本手法の普及を図っていきます。

1分子蛍光分析システム「MF20」について

「MF20」はオリンパス独自の1分子蛍光分析技術を採用した「分子間相互作用解析システム」です。蛍光相関分光法(分子の大きさの変化で解析)、蛍光強度分布解析法(分子の明るさの変化で解析)、蛍光偏光解析法(分子の蛍光偏光度の変化で解析)という3種類の方法により分子間の相互作用を解析します。生体内に近い環境下で、精度の高い効率的な解析が可能です。

1分子蛍光分析システム「MF20」
1分子蛍光分析システム「MF20」

■オリンパス株式会社の概要

所在地:  東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス
設 立:  1919年
資本金:  48,300百万円
代表取締役社長:  菊川 剛
売上高:  1,061,786百万円(連結、2007年3月期)
従業員数:  32,958名(連結、2007年3月末) 
事業内容:  デジタルカメラ、フィルムカメラ、録音機、医療用内視鏡、外科内視鏡、内視鏡処置具、生物顕微鏡、工業用顕微鏡、臨床診断検査システム、情報通信機器、工業用内視鏡、非破壊検査機器、プリンタ、バーコードスキャナ等の製造・販売

■株式会社ジーンケア研究所の概要

所在地:  神奈川県鎌倉市梶原19-2 テコム第二ビル
設 立:  2000年
資本金:  991.3百万円
代表取締役社長:  六川 玖治
従業員数:  19名(2007年3月末)
事業内容:  創薬事業(siRNA医薬:難治性がん領域、低分子医薬:抗炎症、抗アレルギー領域)、診断事業

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