プレシジョン・メディスン*1実現に向けてUniversity of Southern Californiaと共同研究 大腸がん患者由来の細胞モデルを3次元解析することに成功個人最適な治療薬や治療方針を決定するプロセスの確立を目指す

2019年1月8日


大腸がん患者から作成した細胞モデルの3次元解析結果
3次元細胞モデルに薬剤を投与。投薬後、死細胞が確認できる。
(青:通常の細胞核、緑:死細胞)


 オリンパス株式会社(社長:笹 宏行)は、個人最適な医療を提供するプレシジョン・メディスンの実現に向けて、University of Southern California(以下USC)とパートナーシップを結び、がんの予防・診断・治療に関する共同研究を2017年3月より開始しています。今回共同研究の第1フェーズとして、大腸がん患者から作成した細胞モデルを3次元解析することに成功しました。今後は第2フェーズに移行し、多数の患者由来の3次元細胞モデルから多面的にデータを取得し、抗がん剤を評価する有効な手法の確立を図ります。将来的には、がん治療の過程で患者から検体を取得・分析し、個人最適な治療薬や治療方針を決定するプロセスの確立を目指します。

 がん医学において遺伝的研究が進んでおり、何百もの遺伝子が、がんの発病・進行に関係していることや、遺伝子発現パターンは個人によって異なることがわかっています。そのため、抗がん剤を汎用的に投与する治療法ではなく、多数ある抗がん剤の中から個人に最適な治療薬を選択して投与するプレシジョン・メディスンの検討が進められています。将来的には患者からがん細胞を採取し、遺伝子情報や環境、生活様式などから複合的に最適な治療方法を選択できるようにすべく、研究が進められています。

 オリンパスはUSCとパートナーシップ契約を結び、プレシジョン・メディスンの実現に向けた共同研究を実施しています。共焦点レーザー走査型顕微鏡「FLUOVIEW FV3000」や3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight*2」を提供し、USCが取り組むがんの予防・診断・治療に関する研究課題をイメージング技術により解決します。患者由来の細胞モデルを3次元化して用いることで、2次元培養した細胞を使う薬効試験と比較し、抗がん剤の生体内作用をヒトの体内に近い状態で再現できます。これにより、より正確な薬効評価が可能になります。3次元細胞解析など高レベルの解析技術で、がん患者の細胞で起こる複雑な生体内作用を解析して、高密度な情報を提供することで研究をサポートします。

 将来的にはがん患者から取得した検体を用いて、個人最適な治療薬や治療方針を決定するプロセスの確立を目指します。

*1 遺伝子情報などをもとに個人に最適な治療方法を選択すること

*2 米国のみで販売している製品

共同研究の背景

 オリンパスは最先端研究への貢献の一環として、創薬分野に有効なイメージング技術や、新しい診断技術につながる解析技術などの開発を進めています。USCは新たな研究センターの開所に合わせて、がん患者から取得した検体を用いた個人最適な治療方針を決定するプロセスの開発を目指しています。両者の研究開発の方向性が一致したため、今回の共同研究に至りました。本パートナーシップは、がん治療、予防手法の橋渡し研究*3を行う研究室「Lawrence J. Ellison Institute for Transformative Medicine」と、生物学分野においてイメージングによる研究を専門に行う研究センター「Translational Imaging Center (TIC)」という2つの名高い研究室との連携により実現しました。今後はUSCの持つ医学・生物学の知見や患者由来の3次元細胞の培養技術、オリンパスのイメージング・解析技術を融合し、個人最適な医療を提供するプレシジョン・メディスンの実現に向けて取り組んでいきます。またオリンパスは今回の共同研究を足がかりにして、USCから提供される知見やノウハウと自社技術を融合し、さらなるイメージング・解析技術の発展を目指します。

*3 基礎研究で得られた成果を、実際の医療に活用する技術として確立するための研究

USCについて

 1880年に設立された、アメリカ西海岸の名門私立大学です。最難関大学に分類されており、最先端の科学技術と国際経済の中核を成す、世界有数の私立大学です。文学、科学技術など21の優れた研究学部を保有し、世界に40万人(日本人は約1,000人)を超える優秀な卒業生を輩出しています。

 医学、生物学部門においては、がん研究や遺伝子研究などの最先端の研究が行われており、イメージング技術による橋渡し研究を行っています。中でもUSCの厚生科学学部は、「Lawrence J. Ellison Institute for Transformative Medicine」をはじめとした研究室による、がん、幹細胞、再生医療分野における治療や研究が世界的に有名です。

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