学生時代に専攻していた薬学には、医薬品を送達するシステム「DDS(Drug Delivery System)」という概念があります。DDSは治療効果を向上させたり、副作用の危険性を減少させたりすることを目的に、医薬品を「届けたい時に、届けたい場所に、届けたい量を」作用させるために開発された技術で、私はこの“患者第一主義”という考え方に共感していました。そして、就職に際し将来を見据えた時、このDDSの概念を生かしつつ、より発展的に医療を提供できる分野はないかと模索したところ、医療機器にたどり着きました。中でも、消化器内視鏡で世界トップシェアを誇るオリンパスは魅力的に映りました。業界のリーディングカンパニーでなら、新たな試みを実現できる可能性が高いと思ったからです。
人を知る
「患者第一主義」を胸に、次世代製品の評価システムを構築
バイオメディカルエンジニア
入社の動機
また、内定前に開かれた若手技術者との交流会も、入社の意志を固める動機づけになりました。仕事の内容や現場の様子を直接聞けたうえ、参加された先輩社員の方々はどなたも人あたりがよく、温かみのある方ばかり。「一緒に働きたい」という意欲が湧いてきたことを覚えています。
仕事の内容
私が所属する評価技術開発2部は、医学・生物学分野を専門としたエンジニアで構成されており、医療事業の製品開発の上流から上市まで幅広いフィールドで活躍することができます。
製品開発の上流段階では、医学・生物学の観点から生体作用の機序を解明し、その機序に基づき製品担当部門の機械・電気エンジニアと共に次世代製品のコンセプト立案、開発品の性能を確認するための評価系の開発、および評価系を用いて取得した科学的データに基づき開発品の製品設計に対する改善案を提案し、性能のさらなる改良をはかることも行います。また、これらの活動の中で見出した重要な製品設計に関する技術権利を競合他社から保護するための特許活動も行います。新製品を各国に上市する段階では、有効性・安全性を証明し、法規制当局から許認可を取得しなければなりません。そのために、開発した評価系を用いて有効性や安全性の根拠となる科学的データを取得し、申請部門と共に法規制当局への申請対応も行います。
その中でも、私の主な業務は、製品開発に関わるメンバーと連携をとりながら医学・生物学の観点から評価系を開発することです。
やりがい
医学・生物学の観点に基づいた評価系の開発を通して製品開発の一翼を担っています。開発品の性能を正しく理解し、製品設計をより良くする上で非常に重要な役割であるため、この重責を伴う取り組みがいのある仕事に誇りを感じています。
1つの製品を創出するには製品担当部門の機械・電気エンジニアや販売担当者、品質保証のメンバーなど大勢のスタッフが関わってきます。特に私の所属する部署は、基幹事業の内視鏡や外科エネルギーデバイスをはじめ、ほぼすべての医療製品を扱っているため、各担当からさまざまな意見や主張が寄せられます。そこで苦労するのが、立場や考え方が違ったそれぞれの意見を集約することです。時には、評価系の開発初期段階で実現困難な要求を受けて議論になることもあります。その場合は何度も話し合いを重ね、共に試験を行って現実を体感してもらうなど、根気強く理解を求めることで解決策を見出します。
円滑に仕事を進めるためには、日頃から積極的にコミュニケーションを図ることも大切です。顔を覚えてもらうまではメールではなく、相手のところへ足を運んで直接話すなど、信頼関係を築くよう心がけています。その結果、最終的に合意できた際には安堵すると同時に、相手に認めてもらえた気がして達成感があります。
苦心していること
評価技術を開発するには、臨床現場をよく理解した上で取り組むことが重要です。それを踏まえてキーポイントとなる内容を抽出していきますが、その取捨選択には経験や労力を要します。ユーザーである医師をはじめ、さまざまな関係者の知見を参考にしながら1つ1つ内容を精査していくのですが、代替の評価方法として具体化するにあたっては、スムーズに進められない作業に常に難しさを感じています。
医師にヒアリングを行うと、予測と異なることも珍しくありません。対策として、医師と定期的にコンタクトを取って見解の差を埋めるように努めています。また、医師が実際の手術でオリンパス製品を使っている症例動画を見たり、学術文献を読んだりもしています。特に医師と話す際には、その医師の論文などを読み、考え方や手技を理解するように心がけています。
職場の紹介
現在はテーマリーダーを務めています。以前は実験室にいることが多かったのですが、ここ数年はメンバーをマネジメントする業務にシフトしてきているので、居室でのデスクワークが増えました。マネジメントで心がけているのは、後輩の意見を尊重すること。当部署は、「まず挑戦してみなさい」というスタンスで、失敗も勉強だという懐の深さがあります。若手にもどんどん仕事を任せますし、他部署に所属している同期などと話しても、責任が重い仕事を委ねられている印象があります。
私は小学校から大学までサッカーをしており、今も会社のサッカー部に所属しています。毎週水曜の夜に汗をかいてリフレッシュしているほか、サッカー部が参加している八王子サッカー協会の社会人リーグでは月に1度のペースで試合も行っています。和気あいあいとした雰囲気で、勝っている時は盛り上がりますね。メンバーは約50名で、20代から50代までさまざまな部署の人がいます。普段とは違うコミュニケーションがとれるのが新鮮で、スポーツを通して築いた関係が仕事に役立つこともあり、公私ともに良き仲間となっています。