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ものづくりをさらなる高みへ。グローバルな視点で製造現場のデジタル化に挑む

  • 生産技術開発・サービス技術開発

ソフトウェアエンジニア

デジタル技術マネジメントで、グローバルでの連携体制を強化しながら、製造現場のDXを推進しています。当社の製造現場のデジタル化はまだ始まったばかり。現場視点を忘れずに、これまで培ってきた匠の手作業による高度な技術を生かし続けるデジタル化を実現したいですね。

グローバルな視点で製造現場のデジタル化に挑む。医療機器だからこその難しさ

現在の部署、お仕事の内容について教えてください。

私が在籍しているコアテクノロジーディベロップメント デジタル技術マネジメントは、オリンパスの製造業務のデジタル化を推進する部門です。

オリンパスの製造現場には、内視鏡の組み立てなど精密な作業をはじめ、人の高度な手作業を必要とするものづくりが少なくありません。ただそれに伴って、作業指示の確認や作業結果の記録業務などが紙で管理されていたり、工程ごとに手作業でシステムに入力したりしている現状があり、データの集計や確認が効率的に実施できない状況に、多くの方々が苦労しています。

そうした問題を解決するために、どのようなデジタル技術を導入して現場のデジタル化を進めるべきか、製造現場の方々とともに戦略を立案するのが私たちの仕事です。拠点ごとの製造データを集約し、ものづくりの現場の効率化を図るIoTプラットフォームの構築を推進しています。中でも私が担当しているのは、デジタル化に向けたグローバルレベルでの連携強化に取り組んでいます。各国の製造拠点のデジタル化の取り組みを共有する機会を定期的に設け、オリンパス内部の取り組みを把握するとともに、会議の中で紹介されたベストプラクティスを国内拠点の担当者に共有する橋渡しのような役目も果たしています。

また、デジタル化をグローバルで推進するためには、各製造拠点のデジタル化がどの程度進んでいるかを把握する必要がありました。そのため、デジタル化のレベルを測る世界共通の指標をもとに、オリンパス独自のグローバル共通指標を作成。そして、その指標をもとに各国の製造拠点を調査し、どういう技術を導入しているのか、どんなデータ連携をしているのかなど、現状を評価するといった取り組みも行ってきました。

現在は、製造拠点全体のレベルを向上させるための戦略立案に着手していて、課題解決に必要なデジタルソリューションの検証を進めている段階です。今後は各拠点が効率的にデジタル化の取り組みを進められるよう、中期的なシナリオを描き、実行プランに落とし込んでいく予定です。

製造業を現場視点で支えたい。現場のデジタル化を推進できる環境を求めオリンパスへ

これまでのキャリアについて教えてください。

大学院では半導体エレクトロニクスについて研究していました。生体の構造・機能から工学まで幅広く学ぶ医工学の研究室に所属していたことから、医療機器にも関心はあったのですが、液晶ディスプレイに関わる仕事がしたくて大手電機メーカーに入社しました。

主に担当していたのは、スマートフォン用の液晶パネルのプロセス技術です。プロセス技術の役割とは、料理でいうレシピを考えること。どんな材料を使ってどんな方法でつくればうまく製品ができあがるかを検討するような仕事でした。

具体的には、液晶パネルの製造プロセスの中のひとつの工程を担当し、製品の歩留まり向上、製造コスト削減などにつながるアイデアを考え、それに基づいて必要なデータを収集、分析して改善策を導き出し、生産工程に導入するまでの一連の改善活動に携わっていました。

業務効率化に関心をもつようになったのは、入社して5、6年目のころ。人手不足からミスが起こりやすくなって不良率があがり、その対応にリソースが取られ、自分を含め現場が疲弊するという負の循環が生じていたんです。そんな中、定常的な業務を自動化したりデジタル技術を使って改善したりすることで、現場の負担を軽減できないかと考えるようになったのがきっかけでした。

自分の業務範囲でデジタル化に取り組んだ例もあります。生産装置に新しいセンサーを組み付けて自動で生産条件を補正するような仕組みを導入したことで、大きなコスト削減につながりました。

オリンパスへの転職の経緯はどのようなものでしたか?

私自身も医工学の研究をしていたことから、医療業界に興味はもともとありました。前職の経験を踏まえ、業務効率化やデジタル化を個人レベルでやろうとすることに限界を感じていました。たとえば、システム全体を改善するためには、IT部門との連携が必要ですし、膨大な予算も必要です。デジタル化やスマートファクトリー化の取り組みは、専門部署が旗振り役となって経営層を巻き込みながら、全社的なレベルで推進されない限り実現が難しいと感じ、転職を考えるようになりました。

いくつか転職先の候補がある中で、最も自分がやりたい仕事にフィットしていたのがオリンパス。現場でデジタル化を推進するだけでなく、戦略立案にも関われるところが決め手になりました。また、医療機器を扱う製造の現場での仕事ということで、間接的ではありますが、医療の生産現場を支えるということで貢献ができるのは魅力に感じたことも後押しになりました。

変えていかなければ——課題感を共有し、現場と一丸となってデジタル化を推進

入社してみて、オリンパスにはどんな課題があると感じましたか?

医療機器を取り扱う以上、品質が最優先されなくてはなりません。そのため、たとえば製造現場のプロセスを変更しようとする場合、その工程や方法が適切かどうかを検証する一連の作業、バリデーションが法規制によって義務づけられているんです。作業手順の変更はもちろんのこと、使用する原材料や設備が変更になった場合の品質確認など、バリデーションにはたいへんな手間がかかるため、変えることそのものに対するハードルの高さがあると感じています。

しかし、現場や各担当の方々と話していると、皆さんが同じ想いをもっていて、『変えていかなければ』という課題感を共有していることがわかります。現場や各担当と協力しながらさらに課題を洗い出して解決施策の立案・実行を進め、現場負担を少しでも軽減していきたいと思っているところです。

また、デジタル化を進める上で忘れてはならないのは、これまで培ってきた匠の手作業による高度な技術は、オリンパスにとって今後も製品づくりに絶対に欠かせない要素であること。すべてを効率化するのではなく、作業の記録といった付帯業務をデジタルに置き換えることで、技術にさらに磨きをかけていくための環境を実現することが、オリンパスが目指すべきデジタル化だと考えています。

仕事をする上で大切にしていることがあれば教えてください。

前職では製造現場で勤務していましたが、いまは当時の自分がやりたくてもできなかったことや、困っていたことを手助けできる立場。工場の苦労を知る者として、現場視点をもつことを常に心がけています。というのも、デジタル技術を導入しても、現場で働く人がメリットを感じることができないと、使ってもらえないケースも少なくありません。業務改善につなげるためには、現場に寄り添った提案をすることが重要だと考えています。

仕事をする上でいつも意識しているのは、“楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する”という稲盛和夫さんの言葉です。構想時から現実的なことを考えてしまうと、何ひとつ前に進めませんから、まずは楽観的に目標を設定することが重要です。一方、計画時には、目標を実現するために現実的なリスクを徹底的に検討します。この段階で起こりうるすべての問題を想定して対応策を考えておくと、実行段階で問題が起きても余裕をもって対処でき、前向きに目標達成に向けて仕事に取り組むことができるからです。

医療への貢献。誰もが健康で心豊かな生活が送れるような社会を目指して

いまの仕事にどんなやりがい、魅力を感じていますか?

実は、私には高校時代に全身麻酔による内視鏡手術を受けて翌日に退院した経験があり、低侵襲医療が患者さんのQOL(クオリティオブライフ)向上に与える影響の大きさを身をもって体験しているんです。世界の低侵襲医療を支えるオリンパスの医療機器の製造現場をデジタル化によって手助けし、生産性の向上に貢献できることに大きなやりがいを感じています。

また、オリンパスの製造現場のデジタル化はまだ始まったばかり。スタートの時点から関われているところにもやりがいを感じています。

今後の展望について教えてください。

デジタル技術に関する幅広い知識を身につけ、さまざまな選択肢の中から費用対効果の最も高い方法で各課題の解決に取り組んでいきたいと思っています。近い将来、対外的にアピールできるような実績を残して、オリンパスが経済産業省のDX銘柄に選定されるようになるといいですね。

また、いずれ海外拠点に滞在してデジタルのノウハウを学び、日本に持ち帰りたいという気持ちもあります。メドテックカンパニーの一員として、一人ひとりが健康で心豊かな生活を送れるような社会づくりに貢献していきたいですね。

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