印象に残っているのは、ふたつです。ひとつは、新しい内視鏡システムのスコープをローンチしたときのことです。国内向けの戦略的製品としてキャッチフレーズをつけて販売することを提案しました。当時、内視鏡にうたい文句をつける前例がなく、上司も最初は戸惑った様子でしたが、最終的には後押しを受けて実現に至りました。
鼻から挿入する経鼻内視鏡と呼ばれるとても細いスコープなのですが、市場を開拓した他社製品の人気が高く、オリンパスは苦戦を強いられていました。そんな中、その新しいシリーズのスコープの撮影画質は、倍くらいの太さがある従来のオリンパス経口スコープの画質を上回っていて、伸び悩んでいた細径内視鏡市場におけるシェア拡大ができるのではないかと期待されていたんです。“経鼻”というと“経口”よりも劣る製品であるかのような誤解を生むため、印象に残る名前をつけたいと考えました。
そこで、学会内で“極細径内視鏡”が正式名称とされている点に着眼し、その名前で売り出せないかとグループ内で検討を始めたんです。ところが、“極細径内視鏡”はなんとも発音がしづらいので、これでは普及しないという結論に。そこでさらに考えを重ねて出てきたのが、“GoXsai”というキャッチフレーズでした。結果、多くの先生方から、コンセプトを含めネーミングについて評価いただき、いまでは国内の消化器内視鏡の売り上げを支える製品となっています。
もうひとつは、他社との協業が実現したことです。 当時、クリニック市場のマーケティング業務を担当。内視鏡が撮影した画像を保管するシステムとの連携に課題があり、非常に戦いづらい状況でした。競合他社が、内視鏡だけでなく画像を保管するデータベースや放射線情報管理システムも含めて複合提案している中、オリンパスの内視鏡を導入しようとすると、他社のシステムと接続するために高価な中継機を購入する必要がありました。
そこで、どうにかしてオリンパスの内視鏡からダイレクトに外部の画像サーバーと接続することはできないかと考え、いろいろな部署の協力を得ながらクリニック市場の放射線情報管理システムで大きなシェアを占めるコニカミノルタ社との連携が実現できました。
オリンパスの内視鏡が他社の機器とダイレクトに接続されたのはこれが初めて。それまで社内のレギュレーションの関係で叶わなかったことを実現することができ、こうした両社の将来に関わる取り組みを主導させてもらえたことは、とても貴重な経験になりました。
そのときも、名称を提案し、両者の企業カラーから“BLUE Link”と名づけることになりました。 このように、自分自身のアイデアはもちろん、仲間たちとのアイデアが活かされる場面が多く、非常に手応えを感じながら取り組むことができたことが今でも印象に残っています。