人を知る

修理プロセスをグローバル規模で標準化。修理期間を短縮し、医療現場に貢献したい

  • 生産技術開発・サービス技術開発

サービス技術開発

目指すのは、医療機器の修理時間短縮。最善の方法を見出し、世界へ広める

2023年1月現在の業務内容を教えてください。

私が所属しているのは、医療機器の修理について戦略を立て実行を推し進める「修理ストラテジー&プランニング」というチームです。中でもメインで取り組んでいるのが「BOLDプログラム」。「Bring Our Lead time Down」の略で、グローバル規模で修理プロセスを標準化し継続的改善を可能にすることで、修理期間の短縮を目指すプログラムをリードしています。

修理を受け付けてから出荷するまでの期間を最短化し、かつ地域差をなくしどこでも同じレベルの修理を提供できるようになります。これを実現するためにグローバルで150以上ある修理拠点のメンバーと連携しプロセス構築から導入展開までを推し進めています。

現在の仕事のどんなところにやりがいを感じますか?

修理期間を短縮することで、病院において「必要なタイミングで必要な医療機器が使えない」という状況を回避できます。医療現場からは遠い間接部門に所属していますが、自身の努力が確実に現場を支えている、社会に貢献できている、ということにやりがいを感じています。

カメラの修理部門から、医療の修理部門へ。10年以上の経験を活かす

これまではどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

私はもともとオリンパスのカメラ部門で修理業務に携わっていました。カメラが壊れたときにどういう修理をお客様に提供するか、どういった修理プロセスをグローバルで展開していくかという技術的な分野に携わっており、そこで修理プロセスを俯瞰して見る力を身につけました。

医療部門に異動する前は、ドイツに駐在し、欧州全体の修理統括業務を担っていました。修理全体のコストを見て、コスト削減の活動に携わったり、技術的な支援を提供したり、修理の全体的な管理をするといった仕事ですね。この経験を通してグローバルで戦える力を身につけることができました。

2021年に医療部門に異動し、現在は「BOLDプログラム」のプログラムリーダーを担っています。カメラ部門から医療部門に移ったことで製品は変わりましたが、グローバル視点で、いかに効率的に修理するか、という部分は変わりなく共通点が多いです。自身のこれまでの経験を活かしながら、医療でも貢献できるようプログラムのリードに取り組んでいます。

「BOLDプログラム」が始まってから、現在までのプロセスを教えてください。

BOLDプログラムは2021年の1月からスタートし、これまで3つのフェーズに分けて進めていきました。

フェーズ1として、各拠点で実施されているベストプラクティスを集め、理想のプロセスを構築することで標準化を可能にするガイドラインの策定を進めました。プロセスごとにチームを作り、そこに全世界の修理拠点から代表者が参加し討議を繰り返し、全世界共通で適用できる最適なプロセスを検討していったんです。

たとえば、修理期間を短縮するには、修理プロセスを変えるという方法もありますが、「最も効率的なプロセス」は拠点の規模などによって異なります。修理プロセスが1から10まであるとして、大規模拠点であれば製造工場のようなライン生産方式のように1が終わったら2に渡す、という方法が最適です。一方で、作業者数名で動かしている小規模拠点であれば、すべてのプロセスを一人の作業者が完了させる方が効率的かつスムーズです。

しかしこれまでは各拠点の判断で「ウチにはこのプロセスが最適だろう」と決め、グローバルで統一された判断基準がない状況でした。そこで「作業者が〇〇人以上いる拠点であれば、こういうプロセスが最適」「この規模の拠点であれば、このレイアウトにすると効率的」という明確な判断基準を定義することからはじめました。

次にフェーズ2として、フェーズ1で定義したプロセスをインド・カナダの修理拠点に試験導入しました。この試験導入の中でガイドラインの導入効果を見極めると共に、プロセスの検証・改善を行い、ガイドラインを本当に使えるレベルへ更新しました。

そして現在は、フェーズ3として全世界の修理拠点への本格導入を進めています。昨年、白河の修理拠点への導入を完了させ中国へも導入展開中です。今年からアジア全域、欧州、米国とグローバル展開を進め、2025年3月での完了を予定しています。

「BOLDプログラム」の意義を伝え、改善のマインドを根づかせる

プログラムを進める中で、医療機器ならではの特徴はありましたか?

医療機器は修理プロセスが複雑であり、考慮すべきことが多いと感じました。先ほどの話で言うと、カメラの場合は1から10まで一人の作業者が完了させる方法が基本となるため、修理の品質や速度が個々の技術力に左右される部分が多かったです。

そのため、修理プロセスではなく、作業者の技術力向上に加えて修理現場のレイアウトなど、環境面での改善に注力してきました。これに対し、医療機器の場合は修理プロセス自体にも工夫して改善できる可能性がたくさんあります。たとえば、特定の工程で作業待ちが発生してしまう場合は、データに基づくアプローチで工程間のバランスを見直し、停滞時間の最小化を図ることが可能であり、より細かいレベルでの改善が求められます。

また、品質に対する意識にも大きな違いを感じました。医療機器は人体に使用される製品であることから品質が最優先であり、万が一にも製品に不具合があってはいけません。これはカメラ部門からきた私から見ると、大きな意識の違いでした。もちろん品質最優先は大前提ですが、一方でコスト意識が低いという課題にもなり得るため、品質を守りつつも最適なコストで修理が進められるよう、外を知る目線に立ち提言するようにしています。

今後グローバル規模で改善を継続していく中で、どんなことが大切だと思いますか?

一時的な改善ではなく、根づかせることですね。各拠点がガイドラインに従ったプロセスを導入することで標準化が可能となり、改善の水平展開もできるようになることで継続的改善が回り続けるような状態にすることが最終的なゴールです。

白河修理工場への導入が完了し、拠点メンバーにリードの引き継ぎをしているところですが、ガイドラインに従ったプロセスが形骸化しないように、「BOLDプログラム」の意義も引き継いでいます。こういった改善マインドがグローバル全体で根づくように展開を推し進めていきたいです。

修理は修理部門だけでは完結しない。One Olympusを目指して

今後のキャリアイメージについて聞かせてください。

現在はプログラムリーダーという立場ですが、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)のような立場で若手メンバーと一緒に仕事を進めています。医療部門に異動した当初は、技術的な細かい知識を5~10年かけて学ばなければと思っていましたが、今は技術的に深い部分はそれが得意な方々のサポートを得ることで多くの取り組みをうまく推進できると気づきました。

そのため、今後は私自身の強みである修理全体の管理・改善を推し進める能力を強化すると共に、マネジメント領域で力を発揮することに挑戦したいと思っています。

また、本プログラムのグローバル展開が完了した後には、もう一度海外に駐在したいですね。今度はマネージャーなど、より責任のある立場で挑戦できたらと思います。

最後に、今後取り組みたいことを教えてください。

「BOLDプログラム」を通じてあらためて認識したことは、修理は修理部門だけで完結できるものではないということ。開発段階から修理を考慮した設計、修理に必要なパーツの供給、その他にも前工程・後工程でいろいろな部門の協力があってはじめて成り立ちます。

今後さまざまなプロジェクトに携わっていく上でも、お互いの仕事にどんなプロセスがあるのかを理解し合い、他部門の方々としっかりコミュニケーションを取りながら業務に取り組みたいと思っています。 とはいえ、当社はかなり大きい組織で、私は内視鏡の修理というごく一部分にしか関わっていません。マーケティングや営業部門など、まだまだ知らない世界が多いです。

今後はそうした領域にも興味を持ち一緒に仕事ができる機会を求めることで、思わぬ気づきにつながることがあるかもしれないと考えています。多くの社員がそんな風にお互いの仕事に関心を寄せ合えば、新しい発想や工夫が生まれ、オリンパスはもっと強い会社になれると思っています。

その他インタビュー