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PROJECT 01 内視鏡事業 「内視鏡修理プロセス」のグローバル標準化

プロジェクトの概要

オリンパスではグローバルで内視鏡の修理を行っているが、地域によって修理期間に差があることが課題となっていた。そこで、各拠点のベストプラクティスに基づいてグローバルサービスオペレーションの標準化を図り、全世界へ導入することで修理リードタイムの削減と生産性向上を進めている。

プロジェクトの背景

内視鏡が故障してしまうと、修理依頼を受けてから施設に戻るまでの期間は手技がストップしてしまいます。そこでオリンパスでは、世界中の患者さまが安心して内視鏡検査や治療を受けられるよう、世界中に100を超える修理センターを設け、業界トップのグローバルネットワークを構築してきました。その一方で、拠点によって修理プロセスの進め方や体制に違いがあり、修理期間にも地域差が生じていることが大きな課題となっていたのです。世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現に向けて、この課題をクリアする必要がありました。

プロジェクトメンバー

生産技術開発・サービス技術開発

職種:サービス技術開発
横尾 知大

生産技術開発・サービス技術開発

職種:サービス技術開発
川角 洸史

生産技術開発・サービス技術開発

職種:サービス技術開発
服部 利弘

インタビュー

全世界共通の、内視鏡システムの修理プロセスを最適化。
いつでもどこでも、迅速に医療を受けられるように。

Q1.どのようなプロジェクトであったのか教えてください。

横尾

グローバル規模で内視鏡システムの修理プロセスを標準化し、修理期間を短縮させるプロジェクトです。医療機器の修理は、受付から洗浄、部品の確保、修理、動作確認……と出荷までにさまざまなプロセスがあるのですが、これまでは地域によって異なる最適化が行われていたため、修理期間の地域差が課題となっていました。

川角

必要なときに必要な機器を使えなければ、患者さまの命に関わる場合もある。とはいえ、一朝一夕に解決できる課題ではありません。修理拠点は世界100カ所以上に広がるため、どんな地域差があるのか確認するだけでも時間がかかるし、改善を進めるのも大きな時間と労力を要していました。緻密な情報収集と議論、そして仮説と検証を何度も重ねる必要があります。そこで2021年に「BOLD(Bring Our Lead time Down)」という名前のプロジェクトチームを発足し、数ヵ年計画で進めていくことになりました。

服部

プロジェクトのゴールは、各拠点のベストプラクティスに基づいてグローバルサービスオペレーションの標準化を図り、全世界へ導入すること。そのために100以上の修理拠点のメンバーと協働し、まずは各修理拠点の課題を把握するところから始めました。緻密なヒアリングと議論を何度も重ね、標準化が完了し、現在は各修理拠点への導入を進めています。すでにインドやカナダ、日本の白河修理工場などにも導入済みで、中国、韓国、オーストラリアは進行中です。

横尾

このプロジェクトにおける私たちの役割は、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として全体を取りまとめること。各修理拠点とのやりとりやプロジェクトの進行管理、プロセス改善の提案・すり合わせなどを行っています。

ユーザーからの声と、現場を見て実感した課題意識。
その2つが、プロジェクト始動につながった。

Q2.このプロジェクトは、どのようなきっかけで発足したのですか。

横尾

きっかけは大きく2つあります。1つは、各国の医療機関から「修理期間を短くできないか」という声が多く届いていたこと。そしてもう1つは、弊社が修理期間の地域差に課題意識を持っていたことです。オリンパスの消化器内視鏡は全世界で約七割のシェアを誇っており、世界中に修理拠点を持っています。そのため特定の地域だけでなく、全世界のリアルな現場の状況を常にキャッチしてきました。修理拠点のマネージャーやスタッフたちと日々連絡をとったり、海外に出向して実際の現場を見たり。その中で、地域ごとに修理の規模や体制も大きく異なる様子を目にしてきたんです。

川角

そうですね。私は以前中国に駐在していたのですが、そこはライン式で修理する大規模な修理拠点で、修理期間はかなり早いという印象でした。一方で他拠点の修理期間を聞くと、その倍以上かかっている現場もあるとのこと。この修理拠点による差を埋めるために、中国をはじめ各修理拠点のメソッドを活かせないかと考えていました。

服部

私はシンガポールの修理拠点に駐在していたのですが、川角さんがいた中国の拠点とは異なり、小規模な現場且つ一人が一つの修理品を最初から最後まで対応する拠点でした。他の修理拠点と比べると修理期間が長くかかっており、できることなら修理期間を短くできる対策を提案したいと考えていました。しかし、小規模な拠点で工数も限られており、法規制の内容や文化も異なるため、最適な方法が見つからない。似たような問題を解決した例や、小規模でも効率的に進めている例などを参考にできないだろうか……と悶々としていました。

横尾

各修理拠点が抱える課題を解決して迅速に修理できるようになれば、医療機関のニーズに答えるだけでなく、より多くの患者さまに貢献できる。もっといえば、世界中の医療を支えることができる。そうした考えのもと、プロジェクトがスタートしました。

現場に継続的な改善のマインドを根付かせること。
それが一番の課題であり、成功を左右するポイントでもあった。

Q3.プロジェクトを進める上で、課題となったことを教えてください。また、なぜそれが難しかったのか、を具体的に教えてください。

横尾

一番の課題は、現場に継続的な改善のマインドを根付かせることでした。これまでは現場の判断で最適なプロセスを定義してきたため、「今のプロセスが自分たちに合っているはずだ」という考え方が前提にありました。

川角

各修理拠点も、これまでも試行錯誤しながら自分たちで改善を推進してくださっていますし、少しでも早く修理を終えようと作業者の方々は必死に作業を進めてくれている。すでにいっぱいいっぱいの中、現場をストップさせて新たなプロセスに切り替えるのは時間が勿体無いという意見もありました。

横尾

また、医療機器を扱う仕事である以上、どの修理拠点も品質に対する強いこだわりがあります。そのため、今回のようなパフォーマンス向上を目指す取り組みは、品質に何らかの影響を及ぼすのではないかと懸念を持たれていたのです。

服部

「BOLDプログラム」の目的は、ただ標準化したプロセスを導入することとではなく、導入して継続した改善を実施することで修理リードタイムの削減と生産性向上を実現していく必要がありました。そのためには、現場の納得感と、変えていこうとする意志が必要不可欠だったんです。

横尾

改善のマインドを根付かせるのにこれほど苦戦したのは、言語や文化の違いも関係しています。英語ではなかなか微妙なニュアンスが伝わらなかったり、英語圏以外の地域で通訳を介すると誤った解釈をされてしまったりと、言語面ではかなり苦労しました。

服部

YES・NOを明言するか、締切意識の差をどう埋めるか、多数決を大切にしているのか、責任者の鶴の一声で決まるか……。海外駐在の経験があったので、ある程度文化の違いは覚悟していましたが、全世界を巻き込むとここまで大変なのかと頭を抱えましたね。

現場の声と、パフォーマンスの向上。
そのバランスを大切にしたことが結果につながった。

Q4.課題をどのように克服・解決したのか教えてください。

横尾

現場の声に徹底的に耳を傾けたことと、バランスを大切にしたこと。この2つが課題解決に寄与したと思います。前者については、実際に修理拠点に足を運んで現場へのヒアリングを何度も何度も重ね、修理プロセスに関するリアルな声を拾い続けました。その上で、各修理拠点の品質への想いと、時間やコスト面といったパフォーマンスとのバランスなどを検討していったのです。

服部

現場の声を直接聞くために、海外の修理拠点にも数週間ほど滞在しましたよね。私はオーストラリアに行ったのですが、会議の時間だけでなくランチやコーヒーブレイクの時間も一緒に過ごし、仕事をする仲間としてではなく一人の人間として信頼してもらえるよう努力しました。その結果、リモート会議だけでは分からなかった現場の苦労している部分や、改善の余地がある部分などを聞くことができ、その拠点に合った改善の優先順位を一緒に考えることができました。

川角

品質とパフォーマンスのバランスをとるために行ったのは、可能な限り定量的に示すことです。どの工程にどのくらいの時間がかかっているのか、それが新プロセスによってどのくらい短縮できるのか。あらゆるデータを取り、具体的かつ客観的に説明できるようにしました。

横尾

人の命に関わる医療機器を扱っているからこそ、どの拠点も品質へのこだわりは強いんですよね。一方で、効率化やコスト意識に課題がありました。毎週三人で何時間も話し合い、どのデータを使えば理解してもらえるか、どこの拠点を参考にすべきかなど、意識を変えてもらえるための施策を検討し続けました。

川角

また、品質とパフォーマンスのバランスだけでなく、全体で標準化すべき点と個別対応すべき点とのバランスも大切にしました。あくまで目的は修理期間を短縮することなので、全体で標準化した結果、逆に修理期間が伸びてしまったら意味がありません。新プロセスを導入することが大前提ではあるものの、各修理拠点の特性に合わせて最適化するように心がけています。例えば、修理部品在庫管理が優れている拠点では、現状の手法をしっかりと分析をした上で、BOLDの手法へ切り替えるタイミングで部品のショート発生や在庫金額を悪化させないように、特に慎重に進めるようにしています。

服部

現場とここまで二人三脚で進められたのは、各修理拠点と連携しているオリンパスだからこそだと思います。各拠点に駐在員がいていつでも相談に乗ってくれたため、これほど大きなプロジェクトであるにも関わらず、世界中の修理拠点とスムーズに連携がとれました。

導入後の各拠点で、修理期間の短縮に成功。
これからも修理プロセスをアップデートし続ける。

Q5.ユーザーの反応はいかがでしたか。また、プロジェクトを通じて得たことや、今後の展望を教えてください。

横尾

共通プロセス導入によってどれほど修理期間が短縮されたのか、各修理拠点で可視化をしています。プロセス導入後のある修理拠点に訪れた際も、ラインの改良や修理工程の改善などを資料に丁寧にまとめてくれており感動しました。改善マインドが根付いているんだなと思うと、ものすごく大きな達成感を感じますね。

服部

特に印象的だったのは、現場の責任者から「一緒に進めてきた修理の工程改善を実施したことで、生産性が上がって作業者の残業時間を大幅に減らすことができた」と報告をいただいたことです。現場の尽力の成果ではありますが、現場の方々にも実りあるプロジェクトだと認識していただけたのが本当に嬉しかったです。

川角

私は中国も担当していたのですが、コロナ禍で一度プロジェクトが中断してしまいました。しかし、再開後に状況を確認したところ、なんと中断前に提案していたことがすでに実施されていて驚きました。現場がBOLDで目指す姿をしっかりと理解し自分たちの力で新プロセスの導入を進めてくれている。こんなに嬉しいことはないと思いましたね。

横尾

今回のプロジェクトを通じて、ものすごく多くの経験と知識を得られましたが、中でもファシリテーションスキルが一番身につきました。以前はエンジニアとして働いていたので、まさか自分がファシリテーターとして活躍する日が来るとは夢にも思いませんでしたね(笑)。前の部署では自分の求める仕事とは異なる業務をやらなければいけない期間がありましたが、その業務が今回のプロジェクトに大きく活かされています。思いもよらない形で過去の経験が役に立つこともあるので、どんな仕事でも精一杯取り組むことが重要だと伝えたいです。

服部

私も、元々こうしたプロジェクトマネジメントなどを担当していたわけではなく、前の部署では品質管理の仕事をしていました。このプロジェクトを通じて、折衝力や進行管理能力などの横断的なスキルが身についたと思います。

川角

私は、以前と比べて交渉力を伸ばすことができました。言語も文化も考え方も違う人に、どうやって伝えたら納得してもらえるのか。着地点をどこに置くか。相手に信頼してもらうためにどんなコミュニケーションを取るべきか。それらを総合的に考えた上で、状況に応じた最適な判断が取れるようになりました。

横尾

とはいえ、何度も言いますがこのプロジェクトのゴールは継続的改善が回り続ける状態にすることです。そのために進めていくべきなのは大きく2つ。1つは、全拠点への導入を完了すること。そしてもう1つは、プロセスを形骸化させないよう、常に最新版にアップデートし続けることです。

川角

そうですね。今はこのプロセスが最善ではありますが、各修理拠点のニーズや新製品、新修理方式の登場によって、柔軟に変えていきたいです。

横尾

我々の役割を一言で表すなら「医療を止めない修理を提供し続ける」こと。どんなときも、どんな場所でも迅速に修理ができる体制を更新し続け、間接的ではあれど、一人でも多くの患者さまに貢献していきたいです。

PROJECT 02 内視鏡事業

「内視鏡システム」の開発

従来のものを大幅に上回る性能を実現。 オリンパスを代表する次世代内視鏡システムの開発プロジェクト

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