環境方針・戦略

基本的な考え⽅・⽅針

オリンパスグループの環境への取り組みは、経営理念、「オリンパスグローバル⾏動規範」、および2021年4⽉に策定した「環境安全衛⽣ポリシー」のもと実施しています。「オリンパスグローバル⾏動規範」では環境に対する考え⽅や必要な⾏動が⽰されており、これを明確化したものが「環境安全衛⽣ポリシー」です。

1992年8⽉に策定した「オリンパスグループ環境憲章」をはじめとして、2015年5⽉に環境と経済の両⽴に関わる内容を追加すべく「オリンパスグループ環境⽅針」への改訂を⾏い、その後、2021年4⽉に、「オリンパスグループ環境⽅針」に安全衛⽣・健康の⽅針を組み⼊れ、これらを包括的にマネジメントすることを⽬的とした「環境安全衛⽣ポリシー」を策定

環境安全衛生ポリシー

推進体制

オリンパスグループでは、CEOが環境最⾼責任者を務め、EHS(環境・健康・安全衛⽣)を含む、⼈事・総務機能を統括するCHRO(Chief Human Resources Officer)がグループ全体の環境業務の統括責任者を務めています。 CHROの指示のもとEHS統括部門がグループ全体の「環境安全衛⽣ポリシー」を策定するとともに、環境施策の⽴案・推進、エネルギー削減⽬標の進捗度や施策の実施状況などのグループ全体の環境活動状況のモニタリングを⾏っています。
オリンパスグループは、事業場やグループ会社ごとに環境管理部⾨を設け、EHS統括部⾨がグループ全体の環境経営を推進しています。EHS統括部⾨は、環境経営の推進に不可⽋なグローバル各拠点の環境に関する取り組みや法令順守状況および環境関連データを効率的に収集しグループ内で共有する情報基盤を整備し、2015年3⽉期から運⽤しています。
世界各国の主要な⽣産拠点および物流・販売⼦会社ではISO14001の認証を取得し、監査などを通じて環境マネジメントシステムを継続的に改善しています。2021年3⽉期には、オリンパスグループの環境ガバナンスの強化および環境管理の効率化のために、EHS統括部⾨を含む⽇本およびアジア地域の2法⼈を対象としたISO14001のマルチサイト認証※を取得しました。

複数の⼯場や事業所を⼀つのまとまった組織として認証を受ける⽅式

環境推進体制

ISO14001認証取得事業場⼀覧(2024年8⽉現在)

事業場 認証取得年⽉ マルチサイト認証 サイト単独
認証
日本 オリンパス株式会社 グローバル本社 2000年3⽉
八王子事業場 技術開発センター宇津⽊ 2000年3⽉
⻑野事業場(⾠野) 1998年2⽉
⻑野事業場(伊那) 2014年5⽉
⽩河事業場 1998年10⽉
オリンパスメディカルシステムズ株式会社 ⽇の出⼯場 1998年7⽉
⻑野オリンパス株式会社 2011年10⽉
会津オリンパス株式会社 1998年10⽉
⽩河オリンパス株式会社 1998年10⽉
⻘森オリンパス株式会社 1998年11⽉
米州 Olympus Surgical Technologies America National Service Center West 2005年12⽉
Olympus Corporation of the Americas
  • Center Valley Pennsylvania Regional Headquarters
  • Breinigsville Pennsylvania Distribution Center
2019年9⽉
Olympus Surgical Technologies America
  • Bartlett Tennessee Manufacturing Facility
  • Brooklyn Park Minnesota Manufacturing Facility
2019年9⽉
欧州・中東 Olympus Winter & Ibe GmbH
  • Hamburg Manufacturing Facility
  • Teltow(Berlin)Manufacturing Facility
2001年5⽉
KeyMed (Medical & Industrial Equipment) Ltd.
  • Southend-on-Sea Manufacturing Facility
  • Bolton Manufacturing Facility
2002年3⽉
Algram Group Ltd. 2007年1⽉
Olympus Iberia S.A.U. 2018年9⽉
Olympus Medical Products Portugal, Unipessoal LDA 2024年4月
アジア・パシフィック Olympus Trading (Shanghai) Co., Ltd. GuangZhou Branch 2004年10⽉
Olympus Trading (Shanghai) Limited 2012年2⽉
Olympus Vietnam Co.,Ltd. 2013年4⽉
Olympus Australia Pty Ltd 2017年8⽉
Olympus New Zealand Limited 2017年8⽉

仕組み・取り組み

⻑期⽬標と施策

オリンパスグループは、昨今の環境汚染や環境に影響を与える人間活動がもたらす気候変動、その他の⽣態系への影響は喫緊の社会課題であると強く認識しています。2021年5⽉に新たに「社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献」を重要課題(マテリアリティ)に追加するとともに、2031年3月期までに⾃社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope 1、2※1)に関してカーボンニュートラル※2を達成すること、2031年3月期までに⾃社の事業所で使⽤する電⼒を100%再⽣可能エネルギー由来とするという野⼼的な⽬標を策定しました。
また、2023年5⽉にサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope 1、2、3※1)を2040年3月期までにネットゼロ※3とする⽬標を策定し発表しました。そして10月にはSBTiよりオリンパスグループのネットゼロ目標がパリ協定で定められている「1.5℃目標」の水準と整合したものであるとの認定を取得しました。
オリンパスグループでは2031年3月期までにカーボンニュートラルを達成するため、グループ一丸となり製造プロセス改善や省エネ施策を引き続き推進するとともに、⾃社の事業所における全消費電⼒※4を再⽣可能エネルギー由来に段階的に切り替えるなど、温室効果ガス排出量削減に向け取り組みを加速させています。
また、サプライチェーン全体の環境負荷削減の重要性も認識しており、環境配慮型製品の開発、物流効率改善、サプライヤーさまとの協働による温室効果ガス排出量についての⾃主削減⽬標の設定や脱炭素活動への⽀援に継続的に取り組み持続可能なビジネスの実現を目指しています。

※1Scope 1:敷地内における燃料の使⽤による直接的な温室効果ガス排出
Scope 2:敷地内で利⽤する電気・熱の使⽤により発⽣する間接的な温室効果ガス排出
Scope 3:その他の間接的な温室効果ガス排出(Scope1、Scope2を除く)

※2カーボンニュートラル:⾃社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope1,2)を削減し、残存する温室効果ガス排出量に相当する量をカーボンクレジットで相殺し全体としてゼロとすること。

※3ネットゼロ:最新の気候科学(1.5℃シナリオ)に沿って温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を可能な限り削減(90%以上)し、残存する温室効果ガス排出量(10%未満)に相当する量を炭素吸収・除去由来クレジット(植林やCO2回収・貯留など)で均衡させること。

※4⼀部、販売拠点などの賃借物件は除く

2024年3⽉期 主な環境活動実績

重点テーマ 目標 施策 実績・成果 2025年3⽉期⽬標
環境経営の推進 環境ガバナンス
体制の強化
環境マネジメントシステムの有効性向上と運⽤の効率化
  • ISO14001認証維持
  • グローバルの主要製造法⼈にて認証維持(欧州、⽶州、豪州拠点)
  • ⽇本7法人およびアジア3法人に対するISO14001のマルチサイト認証を維持
  • ⽇本6拠点およびアジア1拠点に対する環境統括機能内部監査を実施

ISO14001認証の取得拠点拡大

内部環境監査・ISO14001認証審査における指摘事項への確実な対応

環境リスク低減活動 環境法規制対応プロセスの継続的改善
  • 拠点再編、新棟竣工に伴う法規制対応状況の監視強化
  • 環境関連法規制教育の実施
  • 日本の東京拠点再編、長野新棟に対する環境法規制対応の順守確認を実施
  • ⽶州、欧州、亜州の製造拠点において公害防⽌・廃棄物管理・化学物質管理などの専門教育を実施
  • 製品および事業場の関連規程の維持

グローバル製造拠点の順守プロセス体制・判断基準の点検

製品および事業場系
の環境法規制対応プロセスの継続的改善

環境負荷の低減 カーボンニュートラル

温室効果ガス排出量:カーボンニュートラル達成(2031年3⽉期)
再⽣可能エネルギー導⼊率(電力):100%(2031年3⽉期)

  • 製造改善、省エネ、省資源、燃料転換、⾃然エネルギー導⼊など地域特性に応じた改善活動の継続実施
  • 温室効果ガス排出量:51%削減(対2020年3⽉期)
  • 再⽣可能エネルギー導⼊率:78%
温室効果ガス排出量:60%削減(対2020年3⽉期)
再⽣可能エネルギー導⼊率:85%
当社サプライヤーの80%が科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定(購入した製品やサービス、資本財、上流の輸送・流通の排出量ベース)
(2028年3月期)
  • サプライヤーへのCO2目標設定と削減依頼
  • サプライヤーごとのCO2インパクトの分析・評価を実施
  • 日本の主要サプライヤー25社に対しCO2削減目標の設定協力依頼を実施
サプライヤーへのCO2削減目標の設定協力依頼とCO2削減取組の支援
資源循環

製品ライフサイクルにおける資源循環性向上に向けた環境配慮設計の仕組整備

廃棄物リサイクル率:85%
⽔使⽤効率改善(対2023年3⽉期)

  • 製品環境配慮対策の再構築
  • 製品環境配慮の重点項目設定および対応計画策定
  • 包装材のエコ設計、取説の電子化の取組推進
  • 廃棄物リサイクル率:84%
  • ⽔使⽤効率改善:2.8%改善
製品環境配慮対応計画に沿った取組推進
廃棄物リサイクル率:86%
⽔使⽤効率改善(対2023年3⽉期)

環境法規制の順守状況

オリンパスグループでは、環境法規制対応のための規定類の整備と維持、環境管理責任者や推進者への教育、現地運⽤状態のモニタリングや改善を継続的に実施しています。
2024年3⽉期は、重大な法規制違反や環境に重大な影響を与える事故の発生はなく、罰金・課徴金の発生および金銭的制裁以外の制裁措置は受けていません。

2025年3月期発生の環境法規制違反・事故等(更新:2024年8月30日)

環境データ集

リスク認識

気候変動対応

TCFD(気候関連財務情報開⽰タスクフォース:Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)

オリンパスグループは、気候変動が地球環境を脅かす重⼤な課題であるとともに、オリンパスグループの事業活動に影響を及ぼす重⼤な課題であるとの認 識の下、経営戦略における重要課題(マテリアリティ)である「社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献」への対応の⼀環として、2021年5⽉にTCFDの提⾔に賛同することを表明しました。TCFDのフレームワークに沿って、オリンパスグループにおける気候変動問題への取り組みを開⽰します。

ガバナンス

オリンパスグループでは、製品開発、調達、製造、物流、販売、修理といったバリューチェーン全体を通した環境負荷の低減に取り組んでいます。気候変動対応を含む環境活動の最⾼責任者であるCEOの下、EHS(環境・健康・安全衛⽣)機能を管轄するCHRO(Chief Human Resources Officer)が、オリンパスグループ全体の環境活動を統括しています。また、オリンパスグループのESG(環境・社会・ガバナンス)推進のため、ESG担当役員が設置され、中⻑期事業計画のもとで温室効果ガスの削減を含むESG分野の⽬標が策定されています。​
EHS統括部⾨はCHROにより策定された「環境安全衛⽣ポリシー」のもと、 オリンパス中⻑期事業計画におけるESG分野の⽬標に則りオリンパスグループ全体の環境⾏動計画を策定し、その進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最⾼責任者(CEO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指⽰を⾏います。取締役会は気候変動の対応状況について適宜報告を受け、取り組み状況をモニタリングしています。また、気候変動対応を含むESGへの取り組みに対する経営層のコミットメントを強化するため、執⾏役の報酬について、⻑期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬のうち10%がESG評価機関の評価結果と連動しています。

環境安全衛生ポリシー

戦略

オリンパスグループは、シナリオ分析の手法を用いて、短期、中期および長期の時間軸ごとに気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提示している「1.5℃:RCP1.9(NZE)(産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃未満とするシナリオ)」および「4℃:RCP8.5(産業革命前からの世界の平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1~5年)には、自然災害発生による操業停止・サプライチェーン断絶、気候変動への対応不足や不十分な開示によるステークホルダーからの評価・評判の低下を、中長期的(5~20年)には、炭素税の導入や温室効果ガス削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。
気候変動のリスクは、オリンパスグループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは比較的小さいと推定しています。物理的リスクとしては、自然災害の自社工場操業への影響についても台風や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの面でも、昨今世界規模で台風や洪水が発生し、資材調達や製品供給の面での影響が予想されるため、代替サプライヤーによる生産確保などの体制構築を進めています。また、移行リスクとしては、炭素税導入等による操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると工場でのエネルギーコストは小さいため、影響は限定的であると考えます。
また、気候変動の機会については、温室効果ガス削減に寄与する製品へのニーズの高まりを機会ととらえて、省エネルギー等に配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、当社グループの製品は製品自体が小型で使用によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が小さいことから、事業活動に大きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。

シナリオ リスク・機会の項目 社会の変化/事業への影響 影響度 時間軸 主な取り組み
1.5℃ 移行リスク 政策と法律 既存製品・事業活動・情報開示に関する規制・義務化が拡大 短期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
  • 環境問題に対する取り組み強化と情報開示の充実
炭素税/排出権取引の拡大 中期
技術変化 製造方法や素材の低炭素化に乗り遅れた場合の販売機会の減少 長期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
市場変化 事業活動に要する燃料などのエネルギー、原材料、物流コストの増加 中期
  • 製造プロセス、物流効率の改善
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
  • 環境問題に対する取り組み強化と情報開示の充実
評判 環境問題への対応不足によるステークホルダーからの評価・評判の低下 短期
機会 資源の効率性 製品や包装の見直しにより、原材料コストや廃棄物量が低下 中期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • 水や廃棄物の適正管理の実施
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
エネルギー源 省エネ化によるコスト削減や低炭素エネルギーの活用拡大によりステークホルダーからの評価・評判の向上 短期
製品/サービス 環境配慮型製品の開発による市場競争⼒の向上 長期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • 製品ライフサイクルの資源循環性向上(製品回収・再資源化)への取り組み検討
  • 環境問題に対する取り組み内容の充実化と積極的な情報開示
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
市場 製品の環境配慮推進によるステークホルダーからの評価・評判の向上 短期
レジリエンス 気候変動に対する適応力を確保した事業拡大 中期
4℃ 物理的リスク 急性 自然災害の激甚化によるサプライチェーンの断絶 短期
  • サプライヤーとの協力体制の確保(BCPの実効性を⾼める教育・訓練の継続的実施)
  • 製品とサービスの供給を維持するための最善対策の推進
  • 浸水対策としての浸水可能性箇所の特定と緊急時対応の訓練実施
  • 環境・安全衛⽣リスク診断の対象拠点拡⼤
慢性 平均気温の上昇による空調コストの増加、従業員の体調変化による労働生産性の低下 中期

IEA(「World Energy Outlook 2023」の2030年の炭素税価格をもとに算定した対策を講じない場合の財務影響の推定額:約9億円/年
時間軸:短期(1年~5年)、中期(5年~10年)、長期(10年~20年)
影響度:財務的影響額、オペレーション、ステークホルダー、法令順守の観点から3段階で評価

ネットゼロへ向けたロードマップ

  • ネットゼロに向けたロードマップは、科学的進歩や規制などを考慮し定期的にアップデートしていく予定です。
  • ★:SBTの認定対象
リスク管理

オリンパスグループは、経営戦略や事業計画の策定段階において、オリンパスグループの事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への 影響度が⾼いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移⾏リスク、⾃然災害による物理的リスクの内容も含みます。
リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発⽣可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを⾏い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法⼈の環境統括部⾨が事業所関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。
また、特に事業運営への影響度の⼤きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執⾏会議および取締役会へ報告します。CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不⾜している場合は活動計画の⾒直しを指示します。

指標と目標

オリンパスグループは、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope 1、2、3)を2040年3月期までにネットゼロとする目標を策定し、2023年10月にはSBTi(The Science Based Targets initiative)より、ネットゼロ目標および短期目標において1.5℃目標の水準と整合したものであるとの認定を取得しています。

SBTiに認定された目標
ネットゼロ目標 2040年3月期までにサプライチェーン全体で温室効果ガス排出量(Scope 1、2、3)のネットゼロ達成
短期目標 2031年3月期までに温室効果ガス排出量(Scope 1、2)を2020年度基準年から70%削減
2028年3月期までに当社サプライヤーの80%が科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定
(購入した製品やサービス、資本財、上流の輸送・流通の排出量ベース)

2024年3月期の取組実績は、Scope 1、2では基準年度比(対2020年3⽉期)で約51%削減、Scope 3では約3割のサプライヤー(取引金額ベース)が科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標の設定を完了しています。
今後は温室効果ガス削減目標の達成に向けて、世界各国の拠点での製造改善活動や再生可能エネルギーのさらなる切替・導入とともに、環境配慮型製品の開発や物流効率改善、サプライヤーさまとの協働による温室効果ガス排出量についての⾃主削減⽬標、脱炭素活動への支援に継続的に取り組みます。

自然資本の保全

地球環境や私たちの生活の豊かさに生物多様性は欠かせないという考え方から、オリンパスグループは、各事業場における⽔使⽤・排⽔の管理、緑地の維持管理をはじめ、事業場周辺での清掃活動や森林保全活動、植樹活動などを通じて、⽣物多様性保全の取り組みを進めてきました。近年、生物多様性を包含する陸、海、淡水、大気といった自然資本の劣化が、環境・社会・経済活動に多大な影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。そのため、TNFD※1やSBTs for Nature※2といった国際的なイニシアティブのもとで、事業活動が自然資本に依存する、あるいは自然資本に影響を与えるリスク・機会を特定し、重要なものを管理することの重要性が増しています。こうした動きを踏まえ、オリンパスグループでは、自然資本の保全と事業活動の両立を高いレベルで実現していくために、TNFDが推奨している⾃然資本(陸、海、淡水、大気)に関するリスクや機会を適切に評価・開⽰するための分析手法である、「Locate(発見)」「Evaluate(診断)」「Assess(評価)」「Prepare(準備)」の4つのステップからなるLEAPアプローチでの検討を開始しました。世界自然保護基金(WWF)のBiodiversity Risk Filter※3による事業活動と自然資本の関係に関する初期段階の調査結果、および従来から用いている水リスク評価手法である世界資源研究所(WRI)のAqueduct Water Risk Atlas※4を用いた評価結果を以下に記します。

※1企業活動に対する⾃然資本及び⽣物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開⽰するための枠組を構築する国際的な組織(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)(出展: 環境省)

※2バリューチェーン上の⽔・⽣物多様性・⼟地・海洋が相互に関連するシステムに関して、企業等が地球の限界内で、社会の持続可能性⽬標に沿って⾏動できるようにする、利⽤可能な最善の科学に基づく、測定可能で⾏動可能な期限付きの⽬標( Science Based Targets for Nature)(出展: 環境省)

※3世界自然保護基金(WWF)による森林破壊、汚染、農業のための土地利用変化など、生物多様性損失に関する情報に基づく、地域ごとの生物多様性評価ツール

※4世界資源研究所(WRI)による水リスク評価ツール

各地域での環境保全活動

Biodiversity Risk Filterによる生物多様性評価

主要な開発・生産拠点についてBiodiversity Risk Filterによる生物多様性のスクリーニング評価を実施しました。物理的リスクおよび評判リスクにおいて「Very High」のレベルに該当する拠点がないことを確認しています。また「High」に該当する主な拠点は、日本地域および中国における複数の製造拠点です。

Biodiversity Risk Filterによる評価結果と主要拠点数

Aqueduct Water Risk Atlasによる水リスク評価結果

主要な開発・⽣産拠点についてAqueduct Water Risk Atlasによる水リスク評価を実施し、グループ内において⽔リスクが著しく⾼い拠点がないことを確認しています。また当社の事業活動に与える影響は⼩さいものの、⽔が豊富な場所への事業拠点の設置、事業活動における⽔使⽤量の削減、排⽔設備の管理者の配置ならびに定期的な排⽔測定などを実施しています。

Aqueductによる流域の⽔リスク評価結果と主要拠点数

Aqueductによる流域の⽔リスク評価結果ごとの水使用量の総量

今回の初期調査を踏まえながら、詳細調査やそれに基づく評価を行い、自然資本に対するリスク・機会に対応する活動を進めていきます。

グリーン調達

オリンパスは、2001年に「オリンパスグループグリーン調達基準」を発⾏しました。グリーン調達基準は、Webサイトにも掲載し、すべてのサプライヤーさまにオリンパスグループの環境活動に対する考え⽅を説明しています。
また、継続的に取引のある世界各国の主要なサプライヤーさまを対象に毎年1回実施している企業調査において、以下の取組状況を確認し、サプライヤーさまとともに環境活動レベルの向上を図っています。

  • 環境マネジメントシステムの構築やISO14001認証の取得
  • 法令・社会規範の順守
  • 環境負荷の把握、目標設定、削減取組(温室効果ガス排出量(Scope 1、2、3)、水使用量、廃棄物排出量)
  • 化学物質対策
  • 製品の環境配慮対策
  • 生物多様性保全

オリンパスグループグリーン調達基準

環境教育・意識啓発

オリンパスグループは、「環境安全衛⽣ポリシー」に基づき全員参加の環境活動を進めていくために、従業員⼀⼈⼀⼈の環境意識の向上が重要であると認識し、グローバルなグループ統⼀イベントである「オリンパス環境デー」の取り組みなどを通じて環境意識の啓発に取り組んでいます。2024年3⽉期は、「オリンパス環境デー」の取り組みの中で、グループ従業員を対象とした「環境eラーニング」を実施し、気候変動をはじめとする主要な環境問題や⻑期⽬標であるカーボンニュートラルの実現、水使用量や廃棄物の削減などの資源循環の取り組み、グループ全体の環境活動状況などをグループ内に周知しました。このほか、主要な拠点で地域特性に応じた環境啓発イベントを実施しました。
また、拠点の状況に応じた拠点独⾃の環境eラーニングや、環境法規制対応やISO14001内部監査など、環境マネジメントシステムの改善や効果的な運⽤に 必要となる専⾨的な各種教育を世界各国の各事業場で実施しています。

主な環境教育の実施状況(2024年3⽉期)

区分 対象者 主な教育内容
基礎教育 新⼊・転入社員 新⼊・転⼊社員の雇⼊れ時の環境基礎教育(環境問題と企業の責務およびオリンパスの環境取り組みに関する理解)
  • ⽇本:受講者151名
  • ⽶州:受講者23名
  • 中国:受講者31名
全従業員 世界環境デーに合わせた環境eラーニング(環境保全に対する社会的要請やオリンパスの環境取り組みに関する理解)
  • ⽇本:受講者11,505名 (⽶州・欧州・アジアには環境eラーニング テキストを配布し各地域で活⽤)
社員向け一般環境教育
  • ⽇本(製造・販売の各拠点で実施):受講者3,858名
    アジア(製造拠点で実施):受講者881名
専門教育 環境管理責任者・環境事務局担当者 環境管理責任者・環境事務局の責任および役割の理解(環境法規制順守や有効なEMS構築に向けたポイントなど)
  • ⽇本:受講者5名
    アジア:受講者2名
対象従業員 環境業務担当者向け環境専⾨教育
(公害防⽌、廃棄物管理、化学物質管理などの知識技能の向上)
  • ⽇本:受講者1,146名
  • ⽶州、欧州、アジア:製造拠点において実施