規則正しい生活習慣の重要性―がんと免疫システムの関係―

感染症や病気から身を守るために人間の身体にもともと備わっている防御機能のことを、免疫システムといいます。
免疫システムは、体内の腫瘍(しゅよう)と呼ばれるがん細胞の増殖を発見することができます。しかし、腫瘍は、この発見機能の効果を弱めたり、停止させることができます。このような免疫システムの不具合が、腫瘍を構成するがん細胞の増殖と転移に関わっています。

1. なぜ一部のがん細胞は免疫システムの攻撃を逃れるのか?

腫瘍の成長段階は、免疫システムとの関わり方により、3つのステージに分けられます。これらのステージはそれぞれ、排除相(はいじょそう)、平衡相(へいこうそう)、逃避相(とうひそう)と呼ばれます。

1-1. 排除相(はいじょそう)

免疫システムが腫瘍を構成するがん細胞を攻撃

通常、細胞の成長は、体内のさまざまな仕組みによってコントロールされています。
しかし、一部の細胞ががん細胞に変わると、このコントロールが働かなくなり、がん細胞が増殖して大きく成長し、腫瘍になります。
すると免疫システムは、腫瘍を成長の初期段階で攻撃し、排除します。この段階を排除相(はいじょそう)と呼びます。

1-2. 平衡相(へいこうそう)

ところが、一部の腫瘍は、さまざまな要因によって免疫システムからの攻撃を逃れる場合があります。この段階を平衡相(へいこうそう)と呼びます。
この時点では、免疫システムがまだ腫瘍と闘っているため、腫瘍の成長が止まり、均衡した状態となります。

免疫システムが腫瘍を攻撃、腫瘍の成長が止まる

1-3. 逃避相(とうひそう)

成長を止めた腫瘍は、自分をどのように変えれば免疫の攻撃に勝てるかを、徐々に学びます。この段階が逃避相(とうひそう)です。

がん細胞が免疫細胞に命令、免疫細胞が仲間を攻撃

逃避相では、腫瘍を構成するがん細胞が遺伝的に変化し、免疫システムの攻撃に負けない力を獲得します。
具体的には、がん細胞は、免疫システムががん細胞を見つけるための機能をストップさせたり、がん細胞が免疫から逃れるために自分自身を上手に隠したりします。このようながん細胞は、免疫システムを命令に従わせ、がん細胞を殺すほかの免疫細胞を攻撃させたりします。そうなると、がん細胞は免疫システムに邪魔されることなく、自由に成長して身体のほかの部分に転移するようになります。

このように、一部のがん細胞は免疫システムに打ち勝つ力を持つ場合があるため、免疫システムを正常に保つことが大切です。

2. 免疫システムを正常に保つには

免疫システムを最適な状態で機能させるには、生活習慣が重要です。
具体的には、野菜や果物の摂取、定期的な運動、十分な睡眠、禁煙などにより、免疫システムが活発になります。
しかし、先ほど述べたように、一部のがん細胞は免疫の攻撃をすり抜けてしまいます。
したがって、規則正しい生活習慣を心掛けるとともに、自身が対象となるがん検診を理解し、それらのがん検診を定期的に受け、成長の初期段階で腫瘍を発見することがきわめて重要です。

検査の方法や検診制度は国、地域によって異なります。

本コラムは、がんに関する一般的な情報提供を目的として、医師監修の下作成されています。医師その他医療従事者等が行うべきアドバイスやサービスの提供に取って代わるものではありません。健康状態に関して気になることがございましたら、かかりつけ医師、または専門医にご相談くださいますようお願いいたします。

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