2007年4月25日
個体から細胞まで、生体深部をリアルタイムに観察
小動物用のin vivo生体観察システム「OV110」を新発売
発がん・転移の機構解明、創薬研究の効率化に貢献
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛)は、発がん・転移の機構解明や薬効などの研究に有効なin vivo生体観察システム「OV110」を5月7日から発売いたします。「OV110」は2006年5月に発売した「OV100」の後継機で、高感度かつ近赤外波長領域においても観察可能な光学系を標準で搭載しています。小動物を全体像から細胞レベルまで一台で観察でき、がんの転移や血流量の変化、新生血管数の変化、カルシウムイオンの変化などを生体の深部までリアルタイムで観察することが可能です。本製品の発売により小動物イメージングの効率化が期待でき、オリンパスは大学や研究機関、製薬企業で行われている最先端のがん研究や創薬の加速化に貢献してまいります。
なお、「OV110」は2007年6月20日(水)~22日(金)に東京ビッグサイトで開催される「第6回国際バイオEXPO」、6月28日(木)、29日(金)に福井フェニックスプラザ(福井)で開催される「第2回日本分子イメージング学会」(会長:藤林 靖久 福井大学高エネルギー医学研究センター・センター長、放射線医学総合研究所分子イメージングセンター・副センター長)に展示いたします。
発売の概要
製品名 | 発売日 |
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in vivo生体観察システム「OV110」 | 2007年5月7日 |
「OV110」の主な特長の概要
- 幅広い観察倍率により、全体像から細胞レベルまでの観察が1台で可能
- 優れた蛍光観察性能:
・可視域から近赤外域まで幅広い蛍光観察が可能
・自家蛍光除去フィルタを搭載し、ノイズの少ない観察が可能
・白黒カメラも搭載可能としたことで、より高感度な蛍光検出が可能 - フォーカスハンドル追加による操作性の向上
開発の背景
がん研究は世界各国での生命科学の発展と共にめざましい成果を挙げ、これまでにがん遺伝子、がん抑制遺伝子を発見するなど遺伝子レベル、分子レベルでの解析が進んだ結果、がんの基本的特性への理解が深まってきています。しかしながら、がんは極めて複雑な機構を持ち、がん細胞の浸潤や転移などその全貌を解明するには未だ至っておりません。また、日本では1981年以降、がんが死亡原因の第一位となり続け、今後は高齢社会の進展と共にがん患者のさらなる増加も懸念されています。こうした状況を踏まえ、厚生労働省と文部科学省は合同で「第3次対がん10か年総合戦略」を2004年に策定し、がんの罹患率・死亡率の激減を目標とした政策を推進しています。その中では、がんの機構解明の研究の推進と、基礎研究成果をより効果的な予防・診断・治療へと実用化するためのトランスレーショナルリサーチが特に重要と位置づけられています。
当社では、トランスレーショナルリサーチにおいてニーズが高まっている、生体内の現象を分子レベルで可視化する分子イメージング装置の開発に注力しています。分子イメージングとは、生物が生きた状態のまま、生体内の遺伝子やタンパク質などの分子の量や働きを捉えて可視化する技術であり、基礎研究から臨床応用にいたる創薬プロセスに大きな変化を与えています。その中で特に、当社は蛍光を用いた分子イメージング装置のラインアップを近年強化してまいりました。本製品の前機種「OV100」は、マクロからミクロまで一台で対応できる小動物用分子イメージング装置として他に類を見ないことから、国内外で特に米国の公的機関および大学において高い評価を頂きました。「OV110」は、基本的な製品コンセプトを踏襲しつつ、生体深部を非侵襲で観察したいという高いニーズに対応すべく、より生体透過性の高い近赤外域まで透過率を高めた光学系を標準で搭載しました。また、蛍光タンパクの自家蛍光を抑えるフィルタの採用や、カラーカメラのみならず、より高感度な白黒カメラも搭載可能とすることで、従来より鮮明な蛍光画像の取得が可能となりました。より高機能な「OV110」の導入により、当社は世界中で行われているがん研究やトランスレーショナルリサーチの加速に貢献し、次世代医療につながる取り組みを進めてまいります。
「OV110」の主な特長の詳細
- 幅広い観察倍率により、全体像から細胞レベルまでの観察が1台で可能
0.14倍(観察視野:63mm x 47mm)から16倍(観察視野:0.55mm x 0.41 mm)までの広い倍率範囲を1台でカバーします。全体像で観察することにより、どこの組織で転移が起こっているかを確認し、そのまま転移している場所を拡大することで、細胞レベルまで観察することができます。例えば、発がんから転移、浸潤までのメカニズムを固体、組織、細胞のレベルで解析することが可能です。
作例提供:Dr. Kensuke Yamauchi、 Dr. Katsuhiro Hayashi、 Dr. Meng Yang、 Dr. Robert M. Hoffman/AntiCancer Inc., (USA) - 優れた蛍光観察性能:
- 可視域から近赤外域まで幅広い蛍光観察が可能
観察波長範囲を近赤外域(励起光800nm、観察蛍光1000nm)まで拡げた光学系の標準搭載により、近赤外色素を用いてより生体の深部を観察できるようになりました。 - 自家蛍光除去フィルタを搭載し、ノイズの少ない観察が可能
従来、GFP(緑色の蛍光タンパク)でラベリングしたがん細胞の増殖の様子などを小動物の生体で観察する実験の場合、生体から発する自家蛍光もGFPとほぼ同じ波長で重なってしまい、観察しづらいという問題がありました。「OV110」では生体の自家蛍光を除去するフィルタを新規で搭載し、ノイズの少ない鮮明な画像取得が可能となりました。 - 白黒カメラも搭載可能としたことで、より高感度な蛍光検出が可能
カラーカメラは複数の蛍光物質を同時に検出できる一方、白黒カメラよりノイズが多いというデメリットもあります。前機種「OV100」はカラーカメラのみでしたが、「OV110」ではカラーカメラより高感度な白黒カメラも搭載可能とし、目的に合わせてカメラを自由に選択できるようになりました。
- 可視域から近赤外域まで幅広い蛍光観察が可能
- フォーカスハンドル追加による操作性の向上
フォーカスハンドルの追加により、前機種「OV100」ではPC上で行っていたピント合わせが顕微鏡と同じような使い勝手で行うことも可能となりました。観察位置合わせ、観察する蛍光波長の切り換えなどの操作は電動で行えるので、簡単かつ正確な観察操作性を実現しています。
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