過敏性腸症候群と大腸ポリープが教えてくれた「自分ケア」の大切さ

20代後半から過敏性腸症候群と向き合ってきた高山美穂さん。35歳のとき、内視鏡検査を受けると、大腸にポリープが見つかりました。「自分の体の変化に敏感になることの重要性を感じた」という高山さんに、日ごろ心がけていることを聞きました。

30歳目前で判明した「過敏性腸症候群」

高山さんの正面画像

オリンパスの人事部門で働く高山さんが、腸の異変に気づいたのは28歳のころ。「通勤時や仕事中に、おなかがすごく痛くてトイレに駆け込まなければいけないことが、よくありました」(高山さん)

当初は食べすぎか、飲みすぎのためかなと思っていました。しかし、胃腸の不調が続くので、いくつかの病院で診察してもらったところ、過敏性腸症候群 新規タブで開きますだとわかりました。

過敏性腸症候群とは、消化器の具体的な疾患がないにもかかわらず、腹痛や下痢、または便秘を慢性的に繰り返す状態です。ストレスや不安などの刺激に対して、交感神経系が過敏になる反面、腸管神経系(迷走神経)の働きが低下することで症状が出ると考えられています。

明確な治療法がないのが特徴で、対症療法でしのぐしかありません。高山さんは「毎朝、腸が活発になるのをおさえる薬を飲んでいます。おかげで症状は以前よりも少し抑えられています」と語ります。でも、完治したわけではなく、「いまも腹痛に悩まされることがある」といいます。

内視鏡検査で見つかった「まさか」の大腸ポリープ

そんな高山さんが35歳を迎え、人事部門のキャリア支援の仕事で慌ただしく過ごしていたときのことです。いつも以上におなかの調子が悪く、薬もあまり効かなかったため、主治医に相談して、胃と大腸の内視鏡検査を受けることにしました。検査中、高山さんは医師と会話しながら、内視鏡がとらえた大腸の粘膜の映像をモニターで見ていました。すると、画面に疣(いぼ)のようなものが映し出されたのです。
「これ、ポリープですね」医師の言葉を聞いて、高山さんは驚きました。「まさか30代なかばで、ポリープができているとは思っていませんでした」しかし、医師は冷静に「取っておきましょうね」と言って、ポリープを手際よく摘出しました。

家族歴から「がんになりやすい体質」と自覚

高山さんの話す様子

大腸にポリープがあることを自分の目で確認した高山さん。胸のうちを不安の影がよぎりました。「もし、がんだったら、どうしよう・・・」
というのは、高山さんの父は8年前、大腸がんにかかり、56歳の若さで他界していたからです。母にポリープが見つかったことを報告すると、「お父さんと同じ体質なのね」とひどく心配されました。

摘出から1週間後、病理診断の結果、ポリープは良性だったとわかりました。「ホッとしましたが、これで終わったわけではありません」と高山さん。がんにかかりやすい体質だと自覚して、異変を感じたら放置しないで病院へいくことが大切なのだ、と強く意識しました。

「定期的に2年に1回は、胃と大腸の内視鏡検査を受けたほうがいいと、主治医からも勧められました。自分の体質と長く付き合っていかなければいけないと、改めて思いました」(高山さん)

自分の体の変化に敏感になってあげよう

長い付き合いと言えば、過敏性腸症候群も同じです。「日ごろの生活に気をつけつつ、薬で腸の調子をコントロールしながら、迷走神経系の働きを促すために、ストレスの掛からない、無理をしすぎないライフスタイルを心がけたい」と、高山さんは話します。そのうえで、「自分と同じような悩みを抱えている人がほかにもいるはず」と気にかけています。「もっと早い段階で、過敏性腸症候群だとわかっていれば、もう少し楽だったのではないかと思うことがある」という高山さんは、「自分の体の変化に敏感になってあげるのが大事」とアドバイスします。

ただ、自分が心から信頼できる医師に出会うのは、なかなか難しいことです。インターネットにはさまざまな情報があふれていますが、正しい知識を持って信頼できる医師に診断を仰ぎ、納得して治療を受けることも大切です。
「私の場合は、医師が自分の話をちゃんと聞いてくれるかどうか、そして、納得できるように説明してくれるかどうかを重視しています」(高山さん)

「細く長く、仕事や地域活動を続けていきたい」

高山さんは、人事部門の仕事をする一方で、地域の福祉の現場でボランティアもしています。もともと「人の役に立ちたい」という性格で、医療福祉系の大学で心理学を学びました。会社でも、心理学の知識を生かして、同僚のキャリア相談にのっています。「病院に通ったり、内視鏡の検査を受けたりするのは大変だと思うこともあります。でも、健康を維持しながら、今後もワークライフバランス、交感神経と副交感神経のバランスを考えながら、細く長く、会社の仕事や地域の活動を続けていきたい。そう望むからこそ、通院や定期検査を受けているんだなと思います」(高山さん)

高山さんはそう述べながら、「自分の体をいたわることの大切さ」を口にしていました。

2024年9月の取材に基づき作成しています。患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。