医師の父親と薬剤師の母親のもとで育ち、自然と医療の道を志すことになった大村医師。当初は終末期医療に関心があったそうですが、さまざまな医師の話を聞く中で、がんを治す外科医になることを決意します。「僕にとって大切な人の大切な人、例えば、親友の親の手術を任せてもらえるような医者になりたい、というのが原点です。その思いは今も変わっていません。」(大村医師)
そんな大村医師の国際協力活動がスタートしたのは、2007年のことです。ミャンマーを中心に東南アジアで支援活動を行う国際医療NGOのメンバーとして、現地の病院で医療支援に携わりました。医療機器が整備されておらず、停電もときどき起きる厳しい環境の中で、治療や手術に情熱的に取り組んだ大村医師。現地のスタッフや患者さんからは、ミャンマー語で「力持ち」を意味する「Bala(バラー)」の愛称で呼ばれるようになりました。Dr. Bala(ドクターバラ―)の誕生です。
それ以来、東南アジアの各国に赴き、「1年間のうち1週間を現地の医療支援に費やす」という独自の活動を続けています。滞在中、患者さんたちを集めてもらい、毎日3、4件の手術をしているという大村医師は、現地の病院で内視鏡手術を実践しながら、各国の外科医たちにハイレベルな医療技術を教えています。「ラオスでは、もう助からないと言われていた人が地方から頑張って来てくれて、手術で治したのは良く覚えています。カンボジアでは、海外で8回も手術を受けたのに治らないという患者を手術して治療したこともあります。現地では病気を治すことができず、泣いている人がたくさんいます。そういう人たちを手術で助けられることにやりがいを感じます。」(大村医師)