事業等のリスク
「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年1月31日内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第二号様式記載上の注意(31)の規程を適用しています。
当社グループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性があります。当社グループは、経営理念や企業戦略などの事業目的達成を支援するため、グローバルなエンタープライズ・リスクマネジメント手法を導入しており、リスクマネジメントは、「リスクマネジメント及び危機対応方針」及び関連規程に基づいています。また、当社グループは、「機会」と「脅威」の両面からエンタープライズ・リスクマネジメントに取り組んでいます。機会は、当社グループの持続的な成長と価値創造につながる積極的かつ適切なリスクテイクを通じて捉えられる一方、脅威は、事業目標の確実な達成とコンプライアンス違反の防止のために特定され、優先順位をつけて対処されます。
2023年4月より当社グループは、ガバナンス・リスク・コンプライアンス(以下、GRC)に関連するリスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティの4つの機能を統合し、グローバルGRC組織として新たに立ち上げました。加えて、既存のエンタープライズ・リスクマネジメント・ポートフォリオを先進的な手法に移行し、当社の全ての機能で、この強化された方法にしたがってグローバルなリスクポートフォリオを検証、改良するためのリスク評価を実施しました。
特に注力したエンタープライズ・リスクマネジメントの活動は以下の通りです。
- グローバルなリスクコントロール機能の構築
- グローバルな手法とアプローチの構築
- グローバルに調和したプロセスの構築
これらの活動に注力することで、合理的なエンタープライズ・リスクマネジメントが実行され、事業計画及び財務計画にリスクを反映することを企図しています。また、十分な情報に基づいた経営の意思決定をサポートすることで、当社の事業目標と企業戦略の達成の確度を高めることを目指しています。
エンタープライズ・リスクマネジメントの組織体制
当社グループは、グローバルおよび地域レベルの新しい委員会組織として、グローバル及び地域リスクアシュアランス・コンプライアンス委員会(以下、G-RACC、R-RACC、総称してRACCs)を設立しました。RACCsは、リスクに対処し、適用される方針、法律、規制を遵守するための枠組みを確立、実施、管理することを目的としています。また、勧告、指導、重要リスクについては、グループ経営執行会議(以下、GEC)、取締役会、 監査委員会に定期的に報告され、継続的なモニタリングが行われます。
また、リスクオーナーとして、グローバル事業・機能責任者、地域事業・機能責任者を任命しました。また、各事業・機能でリスク管理を担うリスクコーディネーターを任命しました。リスクオーナーは、自身が管轄する領域において対策(例:組織体制、プロセス準備、重点対策など)を講じる責任を負います。
<エンタープライズ・リスクマネジメント体制>
エンタープライズ・リスクマネジメントの手法とアプローチ
当社グループでは、5つのリスクカテゴリー(1.戦略(外部環境変化を含む)、2.オペレーション&製品、3.ファイナンス、4.ガバナンス、5.IT&デジタル)、及びそれらを具体化したサブカテゴリーによるエンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチを用いています。
<エンタープライズ・リスクマネジメント リスクカテゴリー>
また、当社グループでは、事業目的の達成や企業戦略に影響を及ぼす可能性のある個々のリスクを評価し、明示するために、3つのリスク評価基準(1.エクスポージャー、2. 脆弱性、3.速度)を用いています。
- エクスポージャーは、発生可能性と発生時の影響によって決定します。可能性とは、リスクが顕在化する確率を示し、影響度とは、リスクが顕在化した場合の結果の重大性を示します。可能性と影響度のレベルは、定量的(財務的数値に基づく)または定性的基準として評価します。
- 脆弱性(Vulnerability)とは、リスクが発生した場合に、組織がそのリスクを管理する準備がどの程度できているかを示します。
- 速度 (Velocity)とは、リスク発生後、当社がどの程度の速さでリスクの影響を受けるかを示します。
これらの基準に基づき、当社グループは積極的にリスクを特定、軽減し、監視しており、対応策を定期的に見直し、有効性を検証しています。また、リスクを可視化して管理するため、エクスポージャー、脆弱性、速度を組合わせてリスク評価結果を4つの象限に分け、当該リスクにどのように対処するべきかについて示す「3Dリスクマトリックス」と呼ばれる手法を用いています。さらに、最新のITツールを用いたデータベース及びダッシュボードを導入することにより、十分な情報に基づくリスクベースの意思決定を行うための支援も行っています。
<エンタープライズ・リスクマネジメント評価手法>
エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス
当社グループのエンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスの主な構成要素は以下の通りです。
- リスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価)
- 対応策(リスクの低減、リスクマネジメント活動の実行及び調整)
- リスクモニタリング(リスクモニタリングプロセスの設計、実施、リスクトリートメント活動の有効性の評価)
- リスク報告(リスク及びその対応策を集約・評価し、関連するステークホルダーに定期的に報告する。リスク報告は、リスクマネジメントの年次計画の一部として立案・社内へ展開される)
エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスでは、スリーラインモデルの考え方に沿って、リスクコントロール機能と各事業・機能が緊密に連携を行っています。また、リスクコントロール機能は、エンタープライズ・リスクマネジメント手法及び運用ガイダンスを提供、維持、開発する責任を負っており、新しい組織体制・手法の社内への浸透を進めています。
<エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス>
マクロ経済ビジネス環境
ウクライナにおける戦争と中東情勢の影響により、世界のマクロ経済が大きな影響を受けており、エネルギー価格は上昇し、世界レベルで高止まりしています。さらに、インフレの進展は、引き続きサプライチェーンの混乱の影響も受けています。顕著な技能労働者の不足もあり、経済と消費の全体的な減速につながっていましたが、供給サイドの問題が解消され、金融引き締めが続く中、ほとんどの地域でインフレ率は想定よりも早く低下しつつあります。
また、地政学的な不安定性は経済成長にとって最大の脅威の1つであり、他にもサイバー攻撃、大きな災害を伴う異常気象、原材料や部品の調達から製品供給までの不確実性などに起因し、潜在的な影響の大きいサプライチェーン・リスクは近年増加しています。貿易摩擦が激化し、原材料の安定的な調達が難しくなることで、原材料価格の上昇や製品の供給不足が発生しており、サプライヤー管理の強化に集中的に取り組む必要があります。
さらに、世界的に環境問題への意識が著しく高まっており、あらゆるステークホルダーからの要請が増加しています。
技術面では、あらゆる領域でデジタルトランスフォーメーションが加速しています。それに伴い、開発サイクルの短縮が求められる傾向にあり、いわゆる技術革新領域(AI/ロボット/ICT)の実用化も進んでいます。
業界特有のビジネス環境
医療分野では、医療費の抑制や医療サービスの安全性・有効性の向上による患者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指し、国内外で医療制度改革が継続的に実施されています。その結果、米国食品医薬品局(以下、FDA)や欧州医療機器規制(以下、EU-MDR)をはじめ、各国の医療機器申請・登録に対する法規制要件は年々厳格になっています。また、感染予防や再処理(洗浄・消毒・滅菌)に関する要件も複雑化しています。
各国の医療政策の変化、医療費の削減、医療関連法規の強化、感染予防や再処理に対する要求のさらなる高まりなどにより、技術開発のハードルや複雑さは増しています。それに伴い、新技術や代替技術だけでなく、IT技術大手をはじめとする異業種からの医療業界への参入もあり、事業環境は厳しさを増しています。
さらに、先進国を中心に社会の高齢化が進むにつれ、医療に対するニーズは確実に高まっています。高騰する医療費を適正化し、効果的で質の高い医療サービスを提供するため、各国で医療制度改革が進められています。また、このような状況下、当社グループが関わる事業領域には多くの競合他社が存在し、技術革新も進んでおり、特に治療機器事業における競争は、一層激化しています。
中国市場では、米中貿易摩擦が激化し、国産優遇政策や集中購買の推進など、不透明感が強まっていますが、当社グループは、中国市場を持続的な成長が期待できる市場であると認識しています。その他の新興国市場においても、経済成長とともに医療ニーズが高まっており、さらなる成長が期待出来ると考えています。
また、当社グループが事業を展開する業界では、 グローバルで人材獲得競争が激化しており、労働市場の変化で退職率の高まりもみられ、人材の採用・育成・確保がますます重要になっています。
当社グループのリスク状況(2024年3月期)
2024年3月期に実施したグローバルリスクアセスメントに基づき、リスクを特定・評価しました。
3Dリスクマトリックスにおいて"Improve"の領域に特定されたリスクについては、対応策の優先順位を高く設定しています。"Test"の領域に特定されたリスクについては、既にコントロールが実施されていますが、同時に、定期的なモニタリングにより、既存のコントロールが適切にかつ効果的に機能しているか、確認しています。"Monitor"の領域に特定されたリスクは、エクスポージャーが許容可能なレベルであることを継続的に確認し、必要に応じて追加の対応策を設定します。
リスクカテゴリー | 戦略(外部環境変化を含む) |
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リスクタイプ | 機会と脅威 |
リスクシナリオ | このリスクカテゴリーは、「計画・資源配分」、「事業開発・投資」、「コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント」、「マーケットダイナミクス」、及び「不可抗力」のサブカテゴリーで構成されています。最も高いリスクとして評価されたのは、地政学の脅威、サプライチェーンの中断、不安定な市場における事業展開であり、このカテゴリーには市場・競合状況に関するリスクも含まれています。以下はその一例です。
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対応策 | 当社グループでは、上記のリスクに対応するために以下の対応策を実施しています。
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経営戦略・方針との関連 | 成長のためのイノベーション、生産性の向上 |
リスクカテゴリー | オペレーション&製品 |
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リスクタイプ | 機会と脅威 |
リスクシナリオ |
このカテゴリーは、「研究開発」、「製造・修理」、「エンド・ツー・エンド・サプライチェーン」、「販売・マーケティング・サービス」、「品質」、「資産」、及び「人的資源」のサブカテゴリーで構成されています。最も重大なリスクは、製品品質、エンド・ツー・エンドのサプライチェーン、マーケティング&セールスに存在します。これらは、製品のライフサイクルだけでなく、製品の安定的な供給に関するリスクも含まれています。以下はその一例です。
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対応策 |
当社グループは、患者様の安全に最も重点を置き、顧客に高品質な製品・サービスを提供するため、エンド・ツー・エンド・サプライチェーンの安定と品質プロセスの改善に注力しています。
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経営戦略・方針との関連 | 患者様の安全と持続可能性、生産性の向上 |
リスクカテゴリー | ファイナンス |
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リスクタイプ | 機会と脅威 |
リスクシナリオ |
このカテゴリーは、「資本構造」、「会計・報告」、「流動性・信用」、「収益サイクル」、及び「税務」のサブカテゴリーで構成されています。 当社グループは、世界のさまざまなマーケットにおいて製品およびサービスを提供しており、為替についてのリスクを認識しています。為替が円高に推移した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼし、一方、円安は好影響を与える可能性があります。外貨建債権・債務について可能なものについてはヘッジを行っていますが、急激な為替変動が生じた場合、あるいはヘッジの対象となる債権・債務の発生が予定と大きく異なった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 資金調達のリスクについて、当社グループは、金融機関等からの借入、社債発行による資金調達を行っていますが、金融市場の環境変化によっては、当社グループの資金調達に影響が生じる可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの資金調達に悪影響が生じ、一方、業績良化等により資金調達コストが低下した場合、好影響を与える可能性があります。 さらに、世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等により、追加の税負担が生じる可能性があります。繰延税金資産については、経営状況の変化や組織再編の実施等により、回収可能性の評価を見直した場合、繰延税金資産に対する評価性引当金の積み増しが必要となる可能性があります。そのような事態が生じた場合、当社グループの業績および財政状態に影響が生じる可能性があります。 この他にも、当社グループでは、顧客や取引先等の信用リスクなども認識しています。 |
対応策 |
当社グループでは、為替変動リスクを軽減することを目的として、先物為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を利用しています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化などを通じて、外貨建債権・債務の縮小を図っています。 資金調達に関するリスクに対しては、コマーシャル・ペーパーや公募社債の発行等、資金調達手段の多様化による調達コストの低減に取り組んでおり、長期の有利子負債は基本的に固定金利を採用することで、金利上昇の影響を限定的にしています。また、グローバル・キャッシュ・プーリングの導入により、グループ資金の効率化や財務管理の強化を図っています。 世界各国の租税法令またはその解釈や適用指針の変更等に関しては、法令の改正や規則の変更に対するモニタリングを行いながら、社内の取引ルールを適宜見直していきます。繰延税金資産については、グループ各社の収益性をモニタリングしながら、それぞれの会社が適切な収益を確保出来る様に業績を管理することに加えて、グループ会社間の組織再編においても再編後の収益性の変化に留意することでリスクの最小化を図ります。 また、信用リスクについては、与信先の財務状態等をモニタリングの上、必要に応じた対応を行います。 |
経営戦略・方針との関連 | 生産性の向上 |
リスクカテゴリー | ガバナンス |
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リスクタイプ | 機会と脅威 |
リスクシナリオ |
このカテゴリーは、「カルチャー」、「規制、法務」、「コンプライアンス」、「データプライバシー」、及び「コーポレートガバナンス」のサブカテゴリーで構成されています。以下はその一例です
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対応策 |
これらのリスクに対して実施・継続している主な活動は、以下の通りです。
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経営戦略・方針との関連 | 患者様の安全と持続可能性 |
リスクカテゴリー | IT&デジタル |
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リスクタイプ | 機会と脅威 |
リスクシナリオ |
このカテゴリーは、「ITセキュリティ・サイバー」、「ITアプリケーション」、「ITガバナンス」、「ITインフラ・サービス」及び「デジタル」のサブカテゴリーで構成されています。当社においてはサイバーセキュリティ侵害のリスクを重く評価しており、常に注意と対応が必要だと考えています。 また、患者様への治療の質と効率を向上させるために、当社製品にデジタル技術を活用することが増えており、サイバーセキュリティの侵害に対する対策は、製品開発からバリューチェーン全体に及んでいます。 |
対応策 |
サイバーセキュリティ侵害を回避し、適切に管理するための最も重要な対応策は以下のとおりです。
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経営戦略・方針との関連 | 患者様の安全と持続可能性、生産性の向上 |
リスク評価手法の変更およびリスクポートフォリオの全面的な見直しにより、リスクの内容および順位を変更しました。この結果、以下のリスクは前述のトップリスクよりも評価が低くなったため、上記に記載していません。なお、これらのリスクはすべて、当社グループのリスクポートフォリオに含まれており、現在も対応・モニタリングを行っています。
- 訴訟に関するリスク
- 人材に関するリスク
- 気候および環境を含むサステナビリティに関するリスク
2024年5月17日更新