エヴァ・ガーディアン・アイゼンローアは、弁護士資格と国際公共行政の修士号を有し、ライフサイエンス業界においてGRCに関する豊富な経験を積んでいます。前職では世界的な製薬会社でグローバルジェネラルカウンセルおよびチーフプライバシーオフィサーを務めていました。2021年1月、同氏はチーフコンプライアンスオフィサーとしてオリンパスに入社し、さらに2023年4月にグローバルGRC機能の責任者に任命されました。
アラインド・アシュアランスの実現
2025年3月
フォーカスエリア6:コーポレートガバナンス
ビジネス環境が劇的に変化する中、企業が直面するリスクは近年より多様化し、より予測が困難になってきています。そのため、最先端の医療機器、アプリケーションおよびソリューションのグローバルメーカーであるオリンパスでは、高度なリスクマネジメントの活用がますます重要になっています。オリンパスは、全社で整合されたリスクマネジメントを実現するため、2023年4月1付でガバナンス、リスク、コンプライアンス機能(GRC)を設立しました。
オリンパスのGRC機能長であるエヴァ・ガーディアン・アイゼンローアが、この組織の目的と役割、および当社のリスクマネジメントの取り組みについて説明します。
GRC機能の設立と統合的リスクマネジメントの実施
Q. グローバルGRC組織の使命と役割について教えてください。
A. 私たちの責任は、リスクオーナーが事業戦略に沿ってリスクを特定、分析、評価、軽減するのを支援することです。
従来、オリンパスでは、リスクマネジメントの4つの領域――リスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティ――を、それぞれ専門部署が個別に管理していました。しかし近年、企業を取り巻く事業環境は大きく変化し、サイバー攻撃や自然災害、地政学的な緊張など、さまざまなリスクが増大しています。また、新興技術も大きな影響をもたらしています。当社が直面するリスクを効果的かつ効率的に特定、評価、軽減、監視するため、また、経営陣への報告や必要に応じて協議をするために、包括的なガバナンス、リスク、コンプライアンス(GRC)組織を設立しました。
この組織は現在、前述の4つの領域のリスクマネジメントをより効率的な方法で推進することで、アラインド・アシュアランス(全社で整合されたアシュアランス)を提供しています。4つのリスク領域にわたってリスクマネジメントを整合させることで、経営陣はより情報に基づいた適切な意思決定ができるようになり、企業としての成功をより確かなものとすることができます。私たちの目標は、リスクマネジメントの活用によって、事業を守り、レジリエンスを強化することで、企業価値を守ること。また、情報に基づく意思決定と適切なリスクテイクを可能にすることで、長期的かつ持続可能な価値創出を促進し、価値をつくることです。
アラインド・アシュアランスにより、全社にわたるリスクを統一的な視点で捉え、意思決定を改善するとともに、ガバナンス・フレームワークの有効性を向上することができます。これにより、当社のリスクマネジメントと国際標準へのコンプライアンスの徹底について、ステークホルダーの皆さまに一層の信頼を寄せていただけるものと考えています。当社が今日の複雑性と不確実性を、誠実さ、信頼性、レジリエンスを持って乗り越えることができるよう、私たちグローバルGRCチームは、Guide、Partner、Safeguard(導き、共に取り組み、護る)という協調的なアプローチで支援しています。
アラインド・アシュアランスの実現
Q. グローバルGRCチームはどのようにして統合的なリスクマネジメントを行うのですか?
A. 私たちは5つの主要テーマに焦点を当て、リスクマネジメントを地域間で調和させることから始めています。
オリンパスは、世界をリードするメドテックカンパニーとして、適切なリスクマネジメントを実現するため5つのステップを実施しています:
はじめのステップでは、リスクマネジメント手法を全地域で標準化し、調和をとりました。
次のステップは、GRC機能で収集したリスクマネジメントに関する洞察の、企業戦略への反映です。これにより、戦略目標達成の妨げとなるリスクを積極的に管理し、価値創出と持続可能な成長が可能になります。
3つ目に、リスクオーナー(各部門のリスク管理責任者)と定期的にコミュニケーションをとり、緊密に連携しています。このような社内連携(パートナーシップ)は、統合的なリスクマネジメントにおいて極めて重要であることが証明されています。
4つ目のステップは、リスクマネジメントに対する説明責任を全社に浸透させ、リスクに気づき・正しいことを行うことができる文化を醸成することです。私たちは、日々の業務におけるコンプライアンスと統制(コントロール)に対する従業員の理解促進に継続して取り組んでいます。これにより、事業運営が誠実かつ積極的なリスクマネジメントのもとで行われることが保証されます。
最後に、これらのステップを全社的なリスクに適用することで、リスクが現実のものとなる可能性と、現実のものとなった場合の影響を軽減することを目指しています。
世界をリードするメドテックカンパニーとして、オリンパスは次のような方法で統合的なリスクマネジメントの実現を目指しています:
統一されたリスクフレームワーク:組織の戦略的な目標に整合した共通のリスクマネジメントフレームワークにより、すべての部門、地域、機能にわたり一貫性を確保します。
統合的なリスクアセスメント: 事業部門および地域横断的に調整されたリスクアセスメントにより、包括的な手法でリスクを特定、評価、優先順位付けします。
データドリブン・アプローチ:リスクの捕捉、監視、分析および是正活動の状況を一元化的に把握することで、リアルタイムでの可視化とデータに基づく意思決定を可能にします。これは、社内外の脅威・機会の洞察から得られる継続的なリスクインテリジェンスにより補完されます。
アシュアランス機能全体にわたる連携:3つのライン間の緊密な相互連携により、サイロを打破し、重複を省き、業務効率を高めます。
継続的なモニタリングと報告:動的なリスクモニタリングと標準化されたリスク報告の導入により、実際の行動に結びつく洞察を提供するとともに、経営陣やその他のステークホルダーに対する新興リスクの迅速なエスカレーションを可能にします。
医療機器の継続的なグローバル供給に向けたリスクマネジメントの強化
Q. 現在実施している具体的な取り組みについて教えてください。
A. 私たちは、エンタープライズ・リスクマネジメント(ERM)フレームワークと事業継続および危機管理プロセスの両方を同時に強化しています。
エンタープライズ・リスクマネジメントのフレームワークはすでに導入されており、当社は現在、このフレームワークの継続的な改善とERM手法のさらなる改良に取り組んでいます。当社のERMフレームワークは、事業・機能の責任者がそれぞれの担当領域のリスクを特定、評価、管理するためのツールを提供し、彼らの専門知識と適切な判断をデータに基づく洞察により補完しています。このフレームワークは、リスクを議論するための共通言語を提供し、情報に基づく意思決定とリスクの適切な開示を可能にします。これにより当社は、コンプライアンスと患者さんの安全を当社の使命の中心に据えながら、機会を捉え、計算されたリスクを取り、イノベーションと成長を促進することができます。
さらに、当社のレジリエンスをさらに強化するため、事業継続と緊急・危機管理プロセスの強化にも取り組んでいます。世界中の医師や患者さんに当社製品を安定的に供給することはもちろん、万が一問題が発生した場合には可能な限り迅速に復旧し、通常の状態に戻すことが重要です。
リスクマネジメントは、常に学び、試行錯誤し、改善していく旅のようなものです。私たちは常に新たなリスクに直面しており、その中で事業を継続していくためには新たなリスクマネジメントの手法が必要となります。そのため、私たちは外部環境によるリスクの変動にも注目しています。世界的な政治・経済動向が当社の事業に影響を与えることは明らかで、これらの変動がもたらす可能性のあるリスクについて、私たちの洞察や予測を活用したいと考えています。また、現在、多様な種類・情報源のデータに基づくリスク分析も行っています。リスクマネジメントにおいてもデジタル化が進んでおり、私たちはより適切なリスクマネジメントの実施を目指しています。
Q. 最後に、ステークホルダーの皆さまへのメッセージをお願いします。
A. 私たちはアラインド・アシュアランスを提供することで、当社のガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスをさらに強化するとともに、事業戦略の推進に貢献します。
オリンパスは、グローバル・メドテックカンパニーとしての成長を目指しています。事業戦略の決定にあたっては、GRC機能が事業上の意思決定にリスクの視点を組み込むことで、事業成長を支援しています。これにより、当社は新たなリスクに早期に対処し、事業の継続性を確保し、必要に応じて危機管理を行うことができます。私たちは、世界中の医師や患者さんに当社製品を安定的に供給し続けるため、全社一丸となって取り組んでいくことをお約束します。