データ活用とサプライヤーとのパートナーシップ強化で、レジリエントなサプライチェーンを構築

2025年3月

フォーカスエリア3:責任あるサプライチェーンの推進

オリンパスグループは、責任あるサプライチェーンを重点領域の一つとしています。サプライチェーンに関連するリスク、レジリエンスの確保、そしてサプライヤーとの連携を通じた持続可能性に関するビジョンや取り組みについて、グローバル・プロキュアメント・エクセレンス&パフォーマンス責任者が語ります。

Ranna Rose

サプライチェーンリスク管理 グローバルディレクター
オリンパス株式会社のサプライチェーンリスク管理グローバルディレクターとして、ESG、BCP(事業継続計画)、サプライヤーコンプライアンス戦略を担当。持続可能な調達戦略を推進し、サプライチェーンの透明性強化を通じて、進化し続ける規制やESG要件への、サプライヤーによる対応を確保している。また、情報技術・製造業界での幅広い経験を活かし、多層的リスク管理、サプライヤーエンゲージメント、グローバルサプライチェーンにおけるレジリエンス強化や責任ある調達を強化するESGフレームワークの整備を専門に取り組んでいる。

事業継続の重要な基盤である、サプライチェーンのレジリエンス強化

Q. サプライチェーンリスクを軽減し、レジリエンスを高めるため、どのような取り組みを行っていますか?

A. データを活用したリスク管理や、サプライヤーさまとの関係強化に重点的に取り組んでいます。

ヘルスケア業界で重要な役割を果たすオリンパスにとって、サプライチェーンのレジリエンス強化は、世界中のお客様へ医療機器を途切れることなく供給することにつながります。そのため私たちは、グローバルな事業をサポートする強固で持続可能なネットワークの構築に重点を置いています。
その実現に向けた具体的な手段の一つとして、グローバルリスク管理ツールなどの先端技術を活用することで、グローバルサプライチェーン全体を多層的に可視化し、直接的なサプライヤーさまだけでなく、その先のサブティアも含めたリスク評価に取り組んでいます。地政学的問題、自然災害、サイバーセキュリティの脅威などのリスク源は、直接取引しているサプライヤーさまだけでなく、そのサプライヤーさまが使用する企業や拠点ごとにリアルタイムで監視しています。インシデントが発生した場合、即座にアラートを受け取ることができるイベント監視機能や、インシデントの影響がサプライチェーンにどのように波及するかを迅速に評価するインパクトマッピングなどの機能があります。

Q. そうした機能は、具体的な取り組みにどのように活かされていますか?

A. データと情報に基づき、緊急時への備えの拡充や、即時対応体制の導入に取り組んでいます。

インパクトマッピングは、緊急時対応計画を実施すべきか、代替サプライヤーを探すかなど、迅速な意思決定の基礎となる情報を得られるため、特に重要な機能です。この機能のおかげで、影響を最小限にとどめる適切な措置を、迅速に行うことができています。また当社は、BCP(事業継続計画)調査をサプライヤーさまごとに実施し、ISO 22301の高い基準に基づくBCP強化への理解の向上や、支援を通じて改善が必要なサプライヤーさまを直接サポートしています。
さらに、サプライヤーさまと緊密に連携し、インシデント時のBCP計画の発動、影響の最小化、効率的な業務復旧などの危機管理サポートを提供しています。重要なことは、当社とサプライヤーさまの両方が予期せぬ事態に備え、患者さんへの影響を最小限に留めることができるということです。

サプライヤーと協働したサステナビリティの追求

Q. サステナビリティ(ESG: Environmental, Social, and Governance)に関する具体的な取り組みについて教えてください。

A. ESG評価を実施し、各サプライヤーさまに必要な支援や連携を特定しています。

当社では、サプライヤーさまにESGアンケートを送付し、各社のサステナビリティ活動に関するデータの収集・分析を行っています。エネルギー効率、廃棄物削減、倫理的な労働慣行の遵守などを含むESG評価を通じて、サプライヤーさまと連携すべき項目、機会を特定します。
また、温室効果ガス削減目標などについては、科学的根拠に基づいた目標を採用し、環境パフォーマンスについて報告することを奨励しています。さらに当社では、PFAS規制やEU森林破壊防止規則などの新規制要件だけでなく、データ保護基準などのサイバーセキュリティ関連基準にも対応しています。これらのデータを当社のESG戦略に反映することで、グローバルスタンダードと社会目標に沿った、レジリエントで持続可能、かつコンプライアンスに準拠したサプライチェーンの構築を目指しています。

Q. サプライヤーとともにサステナビリティを推進する上で、どのような点を重視していますか?

A. 信頼と透明性を重視し、サプライヤーさまを単なるベンダーではなくパートナーとしてとらえています。

私たちは、サプライヤーさまを単なるベンダーではなく戦略的パートナーとして扱い、サプライヤー中心のアプローチを貫いています。あくまでパートナーシップですので、サプライヤーさまに対する評価を行うだけでなく、法規制要求に準拠するためのトレーニングやその他のサポートも提供しています。オリンパスグループの経営陣は、ESG、BCP、透明性の重要性を確信しています。世界中のパートナーを直接的に支援・交流しているのはそのためです。

ミクロレベルの課題にマクロな視点で取り組む

Q. グローバル・プロキュアメント・エクセレンス&パフォーマンス責任者としてのあなたの役割をどのように認識していますか?

A. 調達業務の効率を高めるだけでなく、グループの戦略や目標に沿ったサプライチェーンを構築することが、本職の責務です。

本職の主な使命は、調達業務の効率化だけでなく、レジリエンス、サステナビリティ、イノベーションなど、オリンパスグループの戦略や目標に沿った調達を実現することです。そのために、グローバルなサプライヤーリスク管理プログラムの構築、BCP戦略の監督、ESGの促進、グローバル規準・規制への準拠に重点的に取り組むことが、私の任務だととらえています。

Q. こうした取り組みを成功させるための鍵は何でしょうか?

A. 相互理解と尊重を大切にした協働です。

信頼と透明性に基づく関係の構築は、相手がサプライヤーさま、社内チーム、規制当局のいずれであっても不可欠です。特にサプライヤーさまとの関係では、相互理解と文化の尊重が重要であり、当社のサステナビリティへの取り組みに沿った倫理的な連携を重視しています。これらを成功させるには、価値観を共有する人々との連携にかかっていますので、考えを理解している社員たちは極めて重要な資産です。私たちはコアバリューに基づき、常に大局的な視点で考えるよう努めています。それは、私たちの仕事が、会社の経営目標達成を支えるだけでなく、患者さんの回復や、よりサステナブルな世界の実現に貢献することを認識しているからです。

Q. 最後に、ステークホルダーへのメッセージをお願いします。

A. 皆さま全員との連携は、当社のあらゆる活動の要(かなめ)です。

サプライヤーさまは、当社のミッションの実現に欠かせないパートナーであり、サプライヤーさまのレジリエンス、イノベーション、取り組みは、当社の成功に極めて重要です。当社は今後も、持続可能性や透明性の強化、新規制への対応などの分野で、サプライヤーさまとともに限界を押し広げていきたいと考えています。私たちの仕事は単なる調達ではなく、レジリエンスと倫理性を兼ね備えた、未来に備えたサプライチェーンを構築することです。有意義な変化を起こすため、力を合わせて取り組みを続けましょう。

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